ある「職業」の存在が”鍵”...《不動産のプロ》でも簡単に騙されてしまう「社会的信用」の罠とは
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第34回 『偽造書類は見破りようがない!?...《不動産取引のプロ》であるデベロッパーでさえ騙されてしまう地面師たちの巧妙な「手口」』より続く
目をつけていた土地
地道にとって富ヶ谷の土地取引は、ふだんおこなってきたごく自然な不動産ビジネスだった。ことの経緯を次のように説明してくれた。 「井ノ頭通りに面しているくだんの土地は、私も車で通るたびに気になっていたところでした。なぜ、こんないい土地が雑木林のようになって放っておかれているのか、不思議でもありました。不動産業者なら誰もが欲しがるようなすばらしい土地で、車から降りてここらを散策したこともありました。いわば私にとって、あそこはもともと目をつけていたところでした。だからすぐに話に飛びついてしまったのです」 土地面積は484.22平米(147坪)とさほど大きくはないものの、都心に近く高級マンション用地としてはうってつけだ。折しも日本銀行によるゼロ金利政策でマンション投資ブームが続き、新橋のような都心部の再開発だけでなく、都内のマンションブームが長らく続いてきた。 さらに2016年1月からは日銀総裁の黒田東彦がマイナス金利政策に踏み切り、不動産ブームにいっそう拍車がかかった。不動産業界がマンション用地探しに躍起になっている時期だ。そんなタイミングで地道に持ち込まれたのが、富ヶ谷の住宅地売買だった。