<独自>日雇い労働者の街の象徴・あいりん総合センター、強制退去も建て替えは4年遅れ
老朽化で耐震性に問題があり、建て替えが計画されている大阪市西成区の日雇い労働者支援の複合施設「あいりん総合センター」(閉鎖中)について、建設工事の着工が令和9年度以降となる見通しとなったことが30日、大阪府や市への取材で分かった。センターの周囲に滞在していた路上生活者側に退去を求める訴訟で解体が遅れ、着工は従来の計画から約4年遅れとなる見込み。 市は今月19日、センターと隣接する元市営住宅の解体撤去工事の入札を公告しており、来年2月4日に開札を予定。現在のセンターは鉄筋コンクリート造で地上13階、地下1階建てで、解体撤去の工期は契約日から令和9年3月末までとしており、建設工事の着工は9年度以降となる。 昭和45年に建設されたセンターは倒壊のリスクが指摘され、労働施設などの機能を周辺に移転した上で平成31年に閉鎖。府が令和3年に新施設の基本設計を実施しており、当初は4年度までに解体を終え5年度に着工、6年度中に建て替えを終える計画だった。 一方、閉鎖後も野宿者が敷地内に留まり、センターの労働施設を保有する府が2年、立ち退きを求めて大阪地裁に提訴。3年の1審判決は野宿者らに立ち退きを命じ、今年5月に最高裁で府側の訴えを認める判決が確定した。府や大阪市は野宿者に入居先の紹介や支援の呼びかけなどを続け、地裁が12月1日に立ち退きの強制執行を行った。 ■再チャレンジできる街に あいりん総合センターは日雇い労働者の街として知られる「あいりん地区」の象徴とされた施設だった。周囲に滞在していた野宿者は1日の強制執行で立ち退き、市や民間団体が支援を続けている。センターは区の活性化を目指す「西成特区構想」の一環で地域の意見を取り入れた施設に建て替えられる予定。課題を抱える人たちを受け入れてきたあいりん地区の支援拠点となることが求められている。 市や関係者によると、あいりん地区では簡易宿所で暮らす日雇い労働者が、景気の悪化や高齢で仕事ができず、野宿生活となるケースが多い。センターの周囲では約15人が野宿をしていたが、大阪地裁による強制執行後、一部の人は自立支援を行う市の「生活ケアセンター」や、民間の「サポーティブハウス」に入居したという。 福祉支援につながらないまま退去した人もいるといい、市の担当者は「施設を利用してみて『野宿は大変。戻りたくない』という人もいる。まずは支援につなげるために地域を巡回して声掛けを続けたい」とする。