「サシバは環境の物差し」 鳥類専門家ら小学校で出前授業 奄美大島
鹿児島県奄美大島で越冬する渡り鳥のサシバに関する出前授業が13日、龍郷町の龍郷小学校(住友智光校長、児童18人)であった。宇検村出身の野鳥写真家・与名正三さんと全国各地の鳥類専門家ら6人が来校し、「サシバは里山の自然環境の健全度を測る物差し。サシバを守ることは自然を守ることでもある」と語り掛けた。観察会もあり、参加者は楽しみながら生態系保全の価値や奄美の自然の豊かさを体感していた。 サシバは体長50センチほどの小型のタカの仲間。東北から九州地方で繁殖し、秋に南下して南西諸島や東南アジアなどで越冬する。奄美では冬鳥として9月下旬~4月ごろまで見られる。2021年の調査では奄美大島で2千羽以上のサシバの飛来が確認され、国内最大の越冬地と分かった。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。 出前授業では、公益財団法人日本自然保護協会の出島誠一生物多様性保全部長がサシバの生態を説明。▽水田や林がある里山で子育てをする▽昆虫、カエル、ネズミなど多様なものを食べる▽農林業の衰退が生態数の減少につながる-と述べ、繁殖地である栃木県市貝町が実施するサシバを柱とした農業活性化や環境保全、他地域との交流事業などの取り組みを紹介した。 岩手大学農学部講師の東淳樹博士はGPS(全地球測位システム)調査を基に、奄美大島に飛来するサシバが関東以北で繁殖し、毎年同じ地域に戻るとみられることを解説。アジア猛禽類ネットワーク会長の山﨑亨獣医師は「繁殖地と越冬地どちらも大切で、保全のためには地域や国を超えて協力する必要がある」と語り、来年秋に宇検村で開催される国際サシバサミットへの参加を呼び掛けた。 龍郷小では3年前から3、4年生を中心にサシバを通した環境学習に力を入れており、10月には繁殖地長野県の小学校とウェブ会議で交流した。講座の後にあった観察会では、今年3月に学校周辺でGPSを装着した個体を発見。位置情報から繁殖時期には新潟県にいたことが分かっており、児童たちは「ちゃんと戻ってきてすごい」「まだ知らないことがたくさんあって面白い」と歓声を上げていた。 出前授業は12~14日の日程で、宇検村の阿室小中を皮切りに島内6小学校で実施している。
奄美の南海日日新聞