朝ドラ『おむすび』の仕事観 「お客の笑顔を見るのが幸せ」も「お金を稼ぐ」も両方大事
今週放送された連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合ほか)第12週「働くって何なん?」では、「星河電気」の社員食堂に就職した結(橋本環奈)が社会人の洗礼を浴びながら成長していく姿が描かれた。栄養士として雇われ、バランスの良いメニューを作りたい結は、効率とボリュームを重視するチーフ調理師の立川(三宅弘城)の方針と衝突してしまう。 【写真】聖人と話しをする愛子 立川の指示で結は、日替わりランチをメニューから考えてスコッチエッグの温野菜添えを作る。美味しさとヘルシーさから社員の好評を得るが、調理時間がかかるために昼休みの時間内に必要な数を作り切ることができなかった。 ■ ひよっこ結とベテラン立川の関係と並行し、聖人と愛子の仕事観も 第12週は結のエピソードのみならず、「ヘアサロンヨネダ」の経営方針について聖人(北村有起哉)と言い合いになってストライキを起こした愛子(麻生久美子)や、IT企業に就職するも重要な仕事を任せてもらえない陽太(菅生新樹)の姿を通して「プロフェッショナルとは何か」「仕事とは何か」を問う内容になっていた。なかでも、家出から帰った愛子が語ったこの台詞が胸に響いた。 「私はお父さんの下で働いてるんじゃなくて、お父さんと一緒に働いてるの。だから仕事でうれしいことも苦しいことも、一緒に分かち合いたいの」 「うちで髪の毛切った人、みんなニコニコ幸せそうな顔で帰っていくんだよ。それ見るとこっちまで幸せな気分になる」 ■ 脚本家・根元ノンジの幸福論「日常そのものが奇跡」 この台詞ができた経緯について、制作統括の宇佐川隆史さんは「これは台本初稿の段階からありました。まさに週タイトル『働くって何なん?』に対する脚本家・根本ノンジさんの思いですね」と振りかえる。そしてこの台詞には、根本ノンジさんの哲学が込められているという。 「『おむすび』は絶えず、『いろんな視点があっていい』ということを描いています。第12週では結、立川、聖人、愛子、陽太、それぞれの仕事観に『いろんな視点』が現れていました。根本さんは『日常そのものが奇跡』ということをよくおっしゃいます。今使っている机だって、ペンだって、誰かの『仕事』でできている。みんな誰かに支えられて生きている。この日常は『みんなの支えの集合体』なんだと。そうした根本さんの仕事観が、愛子の台詞に現れていると思いました」。 一方、昭和世代で一見「ワンマン」の立川の仕事観も尊重する。宇佐川さんは、「立川の『働くっちゅうことは、金を稼ぐちゅうことや』という論理もまた正しいと思っています。こうしたいろんな人たちの『仕事観』を結が吸収して、自分のなかに糧として宿していくはじめの一歩として、根本さんは今週の『仕事』にまつわる台詞を紡ぎ出したのではないかと思います」と結んだ。 次週13週「幸せって何なん?」では、肩を故障してしまった翔也(佐野勇斗)と結の関係に大波乱が。来週もまた、根本ノンジ節の効いた「幸福論」を堪能できそうだ。 取材・文/佐野華英