《記者コラム》 なぜブラジルにはバレンタインデーがないのか=知る人ぞ知る意外な理由
ドイツ移民200周年祝うポメローデ
復活祭の前、キリスト教徒はチョコレートで作った卵をプレゼントしあう。これは、復活祭の前に40日間断食し、肉を食べるのをやめる。その代わりに、この断食期間の終わりに豪華で盛大な夕食をとる習わしがあり、その流れでプレゼントしあうものだ。 23年3月30日付フォーリャ紙(5)によれば、その際、昔は家族の全員に、子孫繁栄や豊穣を意味する本物の卵を一つずつ与えた。子供たちにあげる卵には、彼らの喜びを増すために表面に美しい模様を描いたものをあげるようになっていた。 このような欧州の伝統が移民によってブラジルに持ち込まれ、本物の卵ではなく、チョコレートになり、更におもちゃや別の種類のチョコを中に入れるという現在の形になったようだ。 ちなみに今年はドイツ人移民ブラジル入植200周年であり、1863年にドイツ移民が建設した「ブラジルで最もドイツ的な街」と言われるサンタカタリナ州ポメローデでは、数々の記念行事が行われる。中でも現在開催中の、このドイツ式の復活祭の卵をメインにした「オスターフェスト」(6)は、ドイツ文化の伝統、風習、美食、音楽、宗教などをブラジルに広めるものとして有名だ。 ヴィアージェン誌23年6月27日付《ポメローデ:ブラジルで最もドイツ的な都市の魅力》(7)によれば、サンタカタリナ州都フロリアノポリスから173キロ離れた、「Vale Europeu(ヨーロッパの谷)」にある人口3万4千人の小さな町で、《ヨーロッパではほぼ絶滅したドイツ語の「いとこ」言語であるポメラニアンが今も話されている世界でも数少ない場所の一つ》として有名だ。 もしもウチナーグチが沖縄で使われなくなり、ブラジルの沖縄系コミュニティだけで話される言語になったら、ポメラニアンと同じことになる。 祖国では失われた伝統が移民によってブラジルに持ち込まれ、その子孫が現代に伝えているということは、当地ではけっこう起きている。もしかしたら、日系社会で盛んにおこなわれている「BomOdori(盆踊り)」「Undokai(運動会)」なども、そうなるかも。(深) (1) https://www.bbc.com/portuguese/articles/c9x9pz7zk82o