「裸の王様には絶対なりたくない」、エネオスHD新社長は多様性追求
多様性確保は道半ば
エネオスHDで多様化の取り組みが進む契機となったのは皮肉にも同社トップが相次いで起こした女性に対する不適切行為だ。
同社で会長グループ最高経営責任者(CEO)を務めていた杉森務氏は22年に女性に対する不適切行為で辞任し、昨年には社長だった齊藤猛氏が懇親の場において酔った状態で同席していた女性に抱きついていたことが発覚し解任された。今年2月にも同社傘下の再生可能エネルギー企業ジャパン・リニューアブル・エナジーの会長がセクシュアルハラスメント行為のため解任された。
一連の不祥事について宮田氏は2月の会見で、「トップの人権に対する考え方が非常に甘い、コンプライアンスの徹底がなっていないというのが共通する背景だと考えている」と述べていた。同社は人材デューデリジェンスの強化、取締役の会食出席時のルール策定といった再発防止策を発表している。
齊藤氏の解任以降、社長代行を務めてきた宮田氏は4月に社長に就任。一連の不祥事があったことで今月14日に発表した取締役人事で多様な人材の登用が一気に進んだ部分はあると認めた上で、多様性が「当たり前だと思っている世界で生きてきたので、全然違和感はない」と話した。その上で、外国人の登用について聞かれるようになったと明かし、「それは次のステップかなと思っている」と意欲を示した。
会社全体における多様性確保の取り組みは道半ばだ。エネオスHDのデータによると、グループ全体の管理職に占める女性の割合は5.3%、外国人にいたってはわずか0.4%だ。宮田氏も十分な数の女性管理職が育っていないことは「残念だ」とした上で、改善に向け自身が積極的に関与していく考えを示した。
資産売却に聖域なし
宮田氏は株主還元の面でも社長に就任早々市場を驚かせた。エネオスHDは5月の決算発表に合わせ、以前に明らかにしていた500億円の自社株買いに、2000億円を追加することを発表。自己株を除く発行済み株式総数の最大22.68%という大規模な自社株買いを好感し、同社の株価は急騰した。