「裸の王様には絶対なりたくない」、エネオスHD新社長は多様性追求
(ブルームバーグ): 「裸の王様には絶対になりたくない」。そう強調するのは経営トップによる不祥事が続いた国内石油大手ENEOSホールディングス(エネオスHD)の宮田知秀新社長だ。エネオスHDでは異例の外資系出身の同氏が、取締役会の多様化や女性の抜てきに向けた取り組みを加速しようとしている。
米石油大手エクソンモービルの子会社だった東燃ゼネラル石油出身の宮田氏は28日のインタビューで、自身はダイバーシティ(多様性)を重視する企業文化の中で育ってきたため、「モノカルチャー(単一文化)ってすごく心配」と述べた。裸の王様になるのを避けるため、社外取締役や女性の登用を進め「いろんなことを言ってくれる人」を周囲に置いていく考えを示した。
実際、エネオスHDが6月に開く定時株主総会で会社側が提案する取締役がそのまま可決された場合、同社取締役会の構成は大きく様変わりし、女性の割合は4割、社外取は7割となる。経営陣の多様性を確保し、女性に対する不適切行為が相次いだ同社の企業文化を変えられるか、宮田氏の手腕が問われる。
ジェフリーズ証券のアナリスト、ファム・タアインハ氏は電話取材で、コンプライアンスが徹底しているエクソンの子会社だった東燃ゼネラル出身の宮田氏の就任を「前向き」に受け止めていると語った。「ガバナンスに問題があると認識して取り組みを行っており、改善方向に向かうのではないか」と述べた。
取締役会の多様性確保は企業の業績向上に寄与することを示す調査もあるが、国内企業の取り組みは遅れており、東京証券取引所はコーポレートガバナンスコード(企業統治指針)を通じて後押ししようとしている。プライム市場に上場するエネオスHDなどの企業は独立社外取締役を3分の1以上選任することが求められている。
エネオスHDの28日の発表によると、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は会社が提案した社外取締役候補者の栃木真由美氏と豊田明子氏について、同社の株式を保有あるいは取引がある金融機関に勤務していた経験があることを理由に反対を推奨している。エネオスHDは両氏の独立性に問題はないなどと反論している。