【レジェンドインタビュー】工藤公康(元西武ほか) “右投げ”だから、“左投げ”だからではなく「自分の特徴を生かして極める」
左打者に対して球種が制限される
史上初の第8戦まで突入した広島との日本シリーズで胴上げ投手になるなど、黄金時代の西武で左のエースとして活躍した
【プロ野球90年特集 魅惑のサウスポー】 プロ野球歴代1位の実働29年を誇る工藤公康氏。通算224勝は左腕では歴代4位の数字だ。きれいなフォームからキレのあるストレート、カーブを投げ込む姿は左投げのお手本とも言われた。ただ、球史に残る実績を残すことができたのも“左腕だから“というわけではない。 取材・構成=小林光男 写真=BBM ──工藤さんは日常生活でも、すべて左利きなのでしょうか。 工藤 打つ、投げるは左ですが字を書くのも、お箸を持つのも右です。もともと、すべて左利きでしたが、野球以外は右に直されましたね。 ──野球において、左投げで良かったと思うところはありますか。 工藤 昔は左投手が少なく、希少価値が高かったですからね。私もプロ入り後、すぐに左のワンポイントで使われましたが、チャンスを早くもらえたところはありました。当時はクリーンアップを打つ左の強打者が多かったですから。阪急はウェイン・ケージ、日本ハムはトミー・クルーズ、近鉄は栗橋(栗橋茂)さん、南海は門田(門田博光)さんなどなど。私は特徴のあるカーブも投げていたので、そういった方たちを相手に投げさせてもらっていました。 ──その中でも印象深かった打者は。 工藤 門田さんですね。身長が高い方ではなかったですが、打席では体が大きく見えました。スイングも速かったというか、見えなかったです(苦笑)。打たれた瞬間にホームランと分かる打球を何本も打たれましたよ。 ──左投手は左打者を抑えて当たり前と見られるところがあります。 工藤 やはり、左投手は数が少なく、左打者からすると対戦経験を重ねられるわけではないですからね。特に左のサイドスローとなると、さらに希少価値が高まります。例えば西武黄金時代を支えた永射保さん。サイドスローはオーバースローにはない角度が生まれ、左打者にとっては背中のほうからボールが来る感覚となります。ただ、これだけではいつか攻略されます。大事なのは角度のほかに、どんな武器があるかだと思います。 ──工藤さんは左打者に対して投げづらさは感じなかったですか。 工藤 投げづらさというか、球種が制限されてしまうところはあります。例えば右打者に投げていたシンカーが、左打者に対してはあまり有効ではないと感じていました。シンカーは右打者から見ると外に逃げていく軌道を描きます。左打者で考えると内角にシンカーを投げることになります。そのボールが有効ではないとなると、左打者にとっては外角だけを狙って踏み込んでいくことができるので攻略しやすくなる。だから、いかに左打者の内角を突くボールを投げるかがカギになるでしょう。私の場合は・・・
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週刊ベースボール