「親友の結婚式で歌ったら新郎側はドーンと引いちゃって」 平松愛理が語る「部屋とYシャツと私」誕生秘話
また、「部屋」と「Yシャツ」と「私」という3つを並べるというセンスも天才的で、他に類似するものがない。この3つはどうやって選んだのか。 「これは、“結婚することで変わるものってなんだろう”って考えていた中で生まれたんです。まず、住まいが変わることから連想して『部屋』、多くの女性が、男性が仕事で着る衣類を洗うようになることから『Yシャツ』、そして、苗字が変わるということで『私』。その3つを並べてみました」 ヒットしていた当時は、“女性版「関白宣言」”のように紹介するメディアもあったが、平松本人にそれを意識して作ったのかを尋ねると、 「確かに、親友に頼まれる前から、担当ディレクターに“女性版の『関白宣言』みたいなのを作ってよ”とは言われていました。ただ、私の中では、ちあきなおみさんの『四つのお願い』のように、ちょっと難しいお願いをたくさん並べるラブソングを作ろうと思っていたんです。だから、ダイレクトではないものの、この2曲は影響していますね」 しかし、これだけこだわり抜いた作品にもかかわらず、作品としてレコーディングするにあたり、“これは平松愛理らしくない”と猛反対にあったそうだ。 「自分の中では“産みの苦しみ”があった分、今までにないほど愛しい曲だったので、アルバムの1曲としてでもいいから残したいと思っていたんです。それだけに、反対されたときは泣きましたね。千代田区にあった『一口坂スタジオ』の非常階段で。でも、ディレクターとアレンジャーだけは“平松らしい”と言ってくれて、無事レコーディングできることになったんです」
曲調にもこだわりあり。発売当時は伸び悩むも、異例のロングヒットに
本作は、1番から2番、3番と楽曲が進むにつれ、まるでおとぎの国で扉が開いていくように演奏がどんどん変化していくのも不思議で面白い。歌詞だけが取り上げられがちだが、一度じっくり聴いてみてほしい。 「この曲は、ディズニーランドのアトラクションからインスピレーションを受けて、“大きな箱の中で人形たちが動いている”というイメージがあったんです。だから、“おもちゃ箱が次々と開いていくようなイメージでアレンジしてほしい”とお願いしました。それだけ、こだわりのある作品だったんです。