介護職で年収1千万円超、世の中にはびこる「やりがい搾取」に反旗翻す株式会社「土屋」高浜敏之代表取締役CEO
「清貧であれ」「福祉で金をもうけるなんて」―こんな「常識」にあえて異論を唱え、「利益追求を怠らず、高い給与水準を実現する」と公言する介護事業の経営者がいる。障害者が地域で暮らすことを支援する重度訪問介護のサービスを基軸に全都道府県で事業所を展開する「土屋」(本社・岡山県井原市)代表取締役CEOの高浜敏之さん(50)だ。半生を振り返り、介護ビジネスの一つのモデルを提示する「異端の福祉」(幻冬舎)を刊行した高浜さんにオンラインで真意を聞いた。(共同通信=中村彰) ▽10年間、ボーナス、社会保険なしだった さまざまな業界で指摘される「やりがい搾取」。高浜さん自身、若いころから福祉業界に身を置き、その中にどっぷりと漬かってきた。 「時給1000円でずっと働いて、10年間、ボーナスなんか1回ももらったことない。社会保険も付いてなかったが、それを言うことですら、はばかられるようなムードがありましたよね。極端な文化、続けられる人は本当に『ひとつまみ』という実感を持ちました」と振り返る。
志は大切だ。だが、それだけに頼っていては心が折れたり、生活のため退出を余儀なくされてしまったりする人が必ず現れる。「(高収入を)私はあえて言うようにしている。介護イコール貧しい、でも、いいことをやっていて、やりがいがあるから我慢していこうみたいな風土だと無理だよねって」 厚生労働省の2021年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、勤続1年の介護職員の平均基本給は17万4580円。これに対し土屋では、25歳・未経験で入社すると月給28万円、賞与や手当を加えて年収364万円が平均例。未経験から入社2年目で年収500万円、ブロックマネジャーになると1000万円を超えるケースもあると「異端の福祉」には書かれている。 土屋は高収入を掲げた結果、毎月1000人以上が求人に応募し、100人以上採用しているという。「やりがい搾取になじまない人、『もらえるものをもらわないとやりませんよ』という価値観の人も入っていける可能性が開かれた」と話す。