「ざまあみろ!」宇垣美里が“わきまえない”新プリンセスを生んだアカデミー賞受賞作に大拍手する理由
元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 【画像】毒々しい大人のおとぎ話、いや、美しい悪夢のよう映画『哀れなるものたち』 そんな宇垣さんが映画『哀れなるものたち』についての思いを綴ります。 ●作品あらすじ:19世紀末、現実とは異なる世界線のイギリス。川に身投げした若い女性は、マッドな天才外科医の手によって、奇跡的に蘇生しましたが、脳は生まれたての状態でした。なぜなら、身ごもっていた彼女の胎児の脳を移植されたからです。 この、“見た目は大人、頭脳は子ども”という奇想天外な難役を演じるのは、『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・ストーン。彼女は主演とプロデュースをつとめ、本作は『女王陛下のお気に入り』以来のヨルゴス・ランティモス監督との再タッグによって成功をおさめています。 すでにヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞し、3月11日(日本時間)開催の第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされ、見事エマ・ストーンが主演女優賞に輝きました。加えて美術賞、衣装デザイン賞、メイク・ヘアスタイリング賞も獲得。 この日本でもヒット中の話題作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)
毒々しい大人のおとぎ話、いや、美しい悪夢のよう
画面いっぱいに広がる独特の映像美ととがった衣装にこだわりの美術、なにより好奇心の赴くままに「なぜ?」と問い続けることで生まれる会話劇が脳を刺激して離さない。鑑賞後、爽快感と愛おしさと共に、なんだかむくむくと力が湧いてきた。ああ、この映画は人生と成長、自由と知性への力強い賛歌だ。 自殺したものの天才外科医の手によって己の胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇(よみがえ)った美しい女性。身体は大人ながら精神は赤子の状態である彼女は外科医によってベラと名付けられ、過保護に育てられるものの、やがて外の世界を渇望するようになる。 そしてプレイボーイな弁護士ダンカンの誘いにのって、世界各地を巡る冒険の旅へ。その中で多くの人に出会い、時に貧困や格差など世界の綻びを目の当たりにしながら、ベラは大人へと成長していく。 水彩画のような鮮やかに広がる空にスチームパンク風の幻想的な街並み、武器のようにどでかいパフスリーブと庭を歩くアヒルと豚のキメラ。 魚眼レンズを用いた歪(いびつ)な映像や不協和音の音楽も相まって、ヨルゴス・ランティモス監督のらしさが全開になった世界観はまるで毒々しい大人のおとぎ話、いや、美しい悪夢のよう。