12時間以上続く? ジョージア式宴会「スプラ」 大量のワイン飲み、料理途切れるのはNGって本当?
職場の同僚や友人・親族と楽しむ「宴会」。祝いや親交を深める場として日本でも古くから浸透していますが、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス三国のひとつジョージアではコミュニケーションの場である以上の「重要な意味」を持つのだとか。同国の歴史やワインの魅力を広める「ナショナル・ワイン・エージェンシー日本事務局」に話を聞きました。 【写真】宴会で、とにかく大量のワインを飲み続ける国とは? ☆☆☆☆ 婚礼や葬儀・誕生日・命日・宗教的な祝日などで開かれる特別な宴席のことを、ジョージアでは「スプラ(Supra)」と呼ぶのだそう。 「スプラはペルシャ語で『数多くの皿が並ぶテーブルクロス』を意味します。テーブルを囲んでお祝いをし家族や友人との友好を深める場である一方、根底には神や平和への祈りや祖国や家族への想いといった精神的なテーマが込められています。スプラは何世紀もの歴史があり、今やジョージア人にとってのアイデンティティともいえる存在と聞いています。2017年には国の無形文化遺産にも登録されました」(ナショナル・ワイン・エージェンシー日本事務局) スプラには人生や生活の重要な節目となるよなものもあれば、友人同士で集まる食事会のようなものもあります。具体的にはどういった内容なのでしょうか? 「スプラでは食べきれないほどの料理がテーブルに並べられ、大量のワインが客にふるまわれます。宴席において『料理がないことは恥』とされているので、料理がなくなると次々に新しい料理が運ばれます。ときには12時間以上にも及ぶことも」(ナショナル・ワイン・エージェンシー日本事務局) ジョージアは古くからワイン造りをおこなってきた国で、その歴史は8000年以上にも及びます。同国ではワインは“単なる酒”ではなく、象徴ともいえる存在なのです。スプラでは1日中ワインを楽しみ、なんと3リットル以上を飲むこともよくあることなのだとか。 日本の宴会と異なるのは「タマダ(Tamada)」と呼ばれる存在がいること。タマダとは司会や進行役のような役割を担う人で、スプラの趣旨を参加者に話し乾杯を捧げます。小規模のスプラなら家長や長老がタマダを務めます。結婚式や誕生日、洗礼式といった大規模なスプラでは前もってタマダを選びます。 「スプラにおいて、乾杯はとても重要な儀式。タマダが『ガウマルジョス(Gaumarjos、勝利に……を意味する言葉)』と告げて乾杯を捧げたあと、参加者全員で乾杯をするという流れがあります。1日中ワインを飲むスプラですが、タマダに限っては『酩酊厳禁』というシビアな決まりがあります」(ナショナル・ワイン・エージェンシー日本事務局) スプラの進行を握りコントロールする指揮者的存在ともなれば、適任者を探すのが難しそう。事務局によると、選ばれるのはやはり知的でユーモアのセンスがある人であることが多いのだとか。優れたタマダは、テーブルの空気を敏感に感じ取り、ぴったりなトークのテーマを提供。オリジナリティとユーモアを交えた乾杯の音頭を取ることもできるそうです。その場に応じて詩や歌を披露することもあるそうで、かなりのスキルが求められるようです。 ☆☆☆☆ 昔に比べると厳格なルールに沿ったスプラは開かれることが少なくなっているそうです。とはいえ、「ワインを飲む」「来客者にたくさん料理をふるまう」という根幹の部分は変わっておらず、今もジョージアの人々にとって大事なものとされています。 (取材・文=つちだ四郎)
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