もしもザポロジエ原発が爆発したら…最悪で「死者数万人、2百万人避難」 爆発物設置?高まる緊張
欧州最大の原発で、ロシアが占拠するウクライナ南部のザポロジエ原発を巡る緊張が再び高まっている。ウクライナのゼレンスキー大統領が7月4日、複数の原子炉建屋の屋上に爆発物が置かれたとの情報があると表明。国際原子力機関(IAEA)も24日の声明で、原発周辺に対人地雷があるのを確認したと発表した。IAEAは建屋屋上の立ち入り調査を求めているがロシア当局は一部しか許可していない。一方、ロシア側は、ウクライナ軍が同原発奪還に向けた作戦を開始する準備を進めているとして、原発事故に備えた救助拠点を同州に設けることを明らかにした。原発があるザポロジエ州はウクライナの反転攻勢の主戦場となるだけに、今後は不測の事態も予想される。 6基の原子炉を持ち、一時はウクライナの総電力の約2割を担う巨大原発で、実際に過酷事故や爆発が起きれば、どのような被害が想定されるのか。同国政府機関の報告や専門家の分析などから検証した。(共同通信=太田清) ▽チェルノブイリ事故の10倍
ロシアとウクライナ両軍の戦闘が激化し、原発敷地内や周辺での着弾や攻撃などの報告が相次いだ2022年8月、ウクライナ北部チェルノブイリ原発事故後の立ち入り禁止区域設定や、その管理を担う同国政府機関「立ち入り禁止区域管理庁」が、ザポロジエ原発事故が起きた場合の被害想定を発表したが、内容は衝撃的なものだった。 立ち入り禁止が予想される区域面積は、チェルノブイリ原発の約10倍となる3万平方キロ、放射能汚染地域は200万平方キロに上り、これはウクライナ全土の面積の3倍以上に上る。これに伴い避難を余儀なくされる人は200万人以上で、被ばくによる死者は数万人となる可能性がある。住民の避難や救助、事故対応に当たる要員は延べ100万人以上必要と想定される。 ロシア、ベラルーシ、ウクライナを通り黒海に注ぐ大河、ドニエプル川は長期にわたって汚染され、事故時の風向きによって、ウクライナのほか、ロシア、ベラルーシ、欧州各国へ被害が及ぶ恐れがある。