イチローの4回劇的交代シーンは意味深なセレモニーだったのか?
ただイチローは今日もスコアボードにHマークを灯すことができなかった。3回無死一塁で回ってきた第一打席は暴投で得点圏に走者が進んだが、144キロのストレートに差し込まれて、セカンドへの内野フライ。しかし、4回の第2打席は、カウント3-1から150キロ級のストレートをファウルで4球粘り、最後はワンバウンドになるチェンジアップを誘い四球で歩いた。ファウルを打ちながら修正を試みた、この打席をサービス監督は「スイングはよかった。ミスショットもあったが、わくわくできるようなエンジンがかかってきた」と評価していた。だが、イチローはバッティングに関しては「もういいでしょう」と質問を遮ったという。 今日21日の第2戦の出場をサービス監督は確約した。 「スタメンかどうかわかりませんが出場はします」 おそらくスタメン出場はないだろう。代打なのか、守備固めなのか、その出場機会は、試合展開によって左右されるだろうが、サービス監督は「日本最後のイチロー」を再び演出してくれる。 しかし、東京ドームを埋める日本のファンにとって、“最後の幸せな1日”が過ぎると、イチローは、進退問題に直面することになる。 外野の椅子をイチローと争うマレックス・スミスは、右肘の故障で東京遠征には帯同しなかったが、「順調に回復していてシアトルでのエキシビションゲームで使ってみたい。守備について見たい」と、この日、サービス監督が断言した。内外野OKのブルース、サンタナ、ハニガー、ビショップに、スミスが加われば、ロースターの枠が、28人から25人に戻る米国開幕の登録からイチローが外れる公算が高い。 シアトルに帰ってもイチローを使うのか?と、米メディアに聞かれたサービス監督は、「私は、1試合、1試合にフォーカスしている。チームの状態、イチローの状態を見ながら判断していきたい」と、答えをはぐらかした。まだトレードなどの不確定要素が絡んでいて最終決断は、球団サイドも、出せないのだろうが、ディポトGMが、「東京の2試合で7本のヒットを打てばイチローに3試合目があるだろう」としていた“生き残りの条件”はクリアできなかった。 25人枠に残れなければ待っているのは引退という選択肢である。 イチローの置かれた状況は厳しいが、サービス監督は「明日もイチローは出る。楽しみにしてください」とメディアを通じて日本のイチローファンへ呼び掛けた。 イチローが作ったドームの空気が、サンタナの劇的な逆転満塁本塁打を呼び込み、チームは5本のアーチが乱れ飛ぶ壮絶な打撃戦を9対7で制した。 その開幕戦をイチローは「特別な開幕戦」と言った。 何があってもイチローはイチローなのである。偉大なる人が残した足跡が色褪せることはない。きっと今日の東京ドームは涙で濡れる。親愛なる背番号「51」は、その背中から、私たちに何を語りかけ、何を見せてくれるのだろうか。