イチローの4回劇的交代シーンは意味深なセレモニーだったのか?
実は、イチローは、事前に監督から「2打席で交代」と知らされていたという。 試合後、サービス監督は、2打席、4回での途中交代について「イチローにプレーを続けても欲しかったが、他の選手も入れたかった。皆さんはイチローを見たいとは思う。だが、チームの勝利のためにベストのことをやりたい。それがこの決断になった」と説明した。 そして意味深で粋な演出をした理由を続けた。 「グレートなイチローと共にプレーできることが、マリナーズにとって、どんな意義があるのか。ファンにとって、そしてマリナーズという組織にとっての意義を考え、輝く瞬間を演出したかった。それに値する選手。イチローにとって適切なことをしたかったのだ。(一度守備につかせてからの交代は)普通のことではないが、ファンの前で適切なことをしたかった」 “セレモニー”は45歳の日本人への最大級のリスペクトを表現したものだった。 MLB公式サイトによると、イチローの通算打率は.311で、メジャー現役最多で歴代23位となる3089安打を放ち、3000本安打&500盗塁を達成したのは7人しかいないという。そのリストには、ルー・ブロック、タイ・カッブ、エディ・コリンズ、リッキー・ヘンダーソン、ポール・モリター、ホーナス・ワグナーがいて、全員が野球殿堂入りしている。イチローが打ちたてた数々の金字塔。そして“ミスター・シアトル”としてのチームへの功績へのリスペクトがある。 昨年5月にわざわざフロント入りさせて試合出場はできないのに、毎試合、これまでと同じような試合前練習の環境を与え、今回の凱旋試合をサポートした。異例とも言える待遇にマリナーズにおけるイチローの特別な立場がわかる。サービス監督が「組織にとっての意義」と語ったのは、そういうことだ。 イチローも、サービス監督の粋な演出に感謝して、一度、ライトのポジションについた。だが、その後に、チームメイトの尊敬の念を示す儀式が待っているとは思っていなかったという。 「(チームメイトのハグ?)それはわからなかったですけどね。でも、アメリカはよくやるけど、日本のファンはちょっと戸惑ったよね」 イチローを敬愛してやまないゴードンが「イチローと一緒にプレーしたかった。彼と一緒に入れることは光栄だ。彼と今日、グラウンドで抱擁できたのはスペシャルな瞬間だった。ファンは(途中交代で)がっかりしていたのかもしれないが、ベンチで彼がみんなとハグをしている姿は見て特別な気持ちになった」と言うと、8番打者として2度出塁しイチローへ回したベッカムもこう言う。 「イチローの前を打てるのは素晴らしい経験。一緒にプレーをすること、そして今日彼と一緒に(日米の)国歌を聞けたのは光栄だった」 イチローと共に味わった東京ドームの記憶を若いチームメイトも心に刻んでいたのである。