途上国と先進国の対立が先鋭化した「史上最低」のCOP29、化石燃料産出国の巻き返し開始で温暖化防止交渉は停滞
■ 「成し遂げるまでは常に不可能に思えるものだ」 米国を再びパリ協定から離脱させる見通しのトランプ氏は「地球温暖化という概念は米国の製造業を競争力のないものにするために中国によって中国のために作られたものだ」「非常に高くつく地球温暖化のデタラメは即刻阻止すべきだ」と懐疑主義をばらまいてきた。 気候危機を「社会主義者の嘘」と切り捨てるアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれる。外務省からの指示でアルゼンチンの代表団80人以上はわずか3日でCOP29から引き上げた。米国に倣ってパリ協定から離脱するかどうかは分からない。 議長国アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領はCOP29の開幕演説で石油と天然ガスを「神からの贈り物」と述べ、自国を「中傷と脅迫の組織的なキャンペーン」の犠牲者に例え、石油・天然ガス産業を目の敵にする西側メディアと気候活動家に反論した。 実は第1次トランプ政権で米国の太陽光発電容量や電気自動車(EV)販売台数は2倍以上に増加した。石炭生産能力は約20%減少した。クリーンエネルギーへの年間投資額は約44%も伸びた。ソーシャルメディアのアルゴリズムが懐疑主義や誤情報を増幅させているのだ。 ゴア氏は、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)と闘ったネルソン・マンデラ氏の言葉を引き「成し遂げるまでは、常に不可能に思えるものだ」と語りかけた。「COPとは鏡である。人類が覗き込む鏡であり、それが醜いものであったとしても、鏡のせいではない」 【木村正人(きむら まさと)】 在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
木村 正人