途上国と先進国の対立が先鋭化した「史上最低」のCOP29、化石燃料産出国の巻き返し開始で温暖化防止交渉は停滞
■ ゴア氏「1日に原爆75万発分の熱を閉じ込めている」 ゴア氏は地球を殻のように覆う青くて薄い大気圏を「毎日1億7500万トンの温暖化汚染物質が吐き出される下水道」に例えた。「1日に原爆75万発分の熱を閉じ込めている。スペインのバレンシア、ネパールの洪水など母なる自然は私よりも雄弁に気候変動の危険を物語る」 米ノースカロライナ州を襲ったハリケーンはナイアガラの滝の全流量619日分(40兆ガロン)をたった2日でぶちまけた。しかし先進国より途上国が抱える問題の方がはるかに大きい。「アフリカ大陸全体で設置されているソーラーパネルの数が米フロリダ州よりも少ないのだ」 大陸ごとに持ち回りのCOPはエジプト、UAE、アゼルバイジャンと3年連続で、化石燃料産出国で開かれた。天然ガスは過渡的エネルギーとして免罪符を得つつある。環境団体の分析ではCOP29には少なくとも1773人の化石燃料ロビイストが参加を認められた。 「化石燃料産業は気候交渉に影響力を及ぼすため、あらゆる費用を惜しまない。彼らは排出量よりも政治家を取り込む方がずっと上手い」。ゴア氏は化石燃料産業ロビイストがCOPに参加するための資格として信頼できるネットゼロ(実質排出量ゼロ)への誓約を求めている。
■ 「汚れることなしに化石燃料からグリーンに移行できない」 英紙ガーディアン(11月20日付)は「“資本主義の権化” 化石燃料に溺れた世界で最も権威ある米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの内幕」と題し、産油国が石油産業を維持する抜け道を見つけるのをマッキンゼーが助けている実態を暴いている。 同紙と気候報道センター(Centre for Climate Reporting)の調査報道によると、マッキンゼーは世界がよりクリーンなエネルギーに移行する手助けをすると公言する一方、その裏では化石燃料の生産量や販売量を増加させるようクライアントに助言しているという。 マッキンゼーのパートナーは2021年に「企業は少しも汚れることなしに化石燃料からグリーンに移行することはできない。もしそれがマッキンゼーの社名に泥を塗ることを意味するのであっても、私たちはそれに耐えなければならない」という内部文書を残している。 16年にパリ協定が発効して以来、世界の二酸化炭素排出量の80%を、化石燃料を生産する57社が担っている。同紙と気候報道センターが裁判記録を分析したところ、マッキンゼーに関係する企業のリストの中にそのうちのほぼ3分の2が含まれていた。