佐賀バルーナーズ「選手に共通する地域還元の意識 」井上諒汰選手、山下泰弘選手、角田太輝選手インタビュー【バスケ】
山下泰弘選手「強いだけでは意味がないと思います」
Bリーグ協力の下、リーグで行われている社会的責任活動「B.LEAGUE HOPE」にフォーカス。今回は佐賀バルーナーズが進めるオフコート活動についてです。 B1昇格初年度となったB.LEAGUE 2023-24シーズン、昇格初年度の最高勝率を残しただけでなく、B1で5位という観客動員数を記録した佐賀バルーナーズ。しかしながら、キャプテンの山下泰弘選手は「強くなることは大切ですが、強いだけでは意味がないと思います」と言います。 “強いだけでは意味がない”――だからこそ、社会貢献活動にも積極的に取り組む。井上諒汰選手が活動について「自負や責任があります」と語ると、角田太輝選手は「僕らがバスケットボール選手として生きていくうえで当たり前なんじゃないかと思っています」と言い切ります。佐賀バルーナーズと地域の関係は、クラブとコミュニティーの望ましい関係の一例と言えるかもしれません。今回は、井上選手、山下選手、角田選手の3選手にオフコートでの活動への思いを伺いました。
井上諒汰選手 医療的ケア児施設を定期訪問“知る切っかけとなり広がってほしい”
--井上選手は定期的に医療的ケア児*施設を訪問されています。初めて訪問された時のことを教えていただけますか? *=日常的に医療的ケアが必要な児童のこと 井上)施設の方からチームに連絡をいただいて、バスケットボールを題材に子どもたちに楽しんでほしいと相談があり、私が手を上げたというところがスタートです。医療的ケア児という存在を知らなくて、どう接していいかと思ったんですけど、実際に会ってみるととても自然に楽しい時間を過ごすことができました。ボールで遊んだり、機械を使って話をしたりして、すごくエネルギーを感じることできた経験でした。 --そこからは定期的に訪問されているわけですね。 井上)そうですね。単純に「かわいい子どもたちに会いたいな」という気持ちで訪問しています。逆に医療的ケア児の子たちが試合を観に来てくれることもあります。定期的に行って、抱っこした時に「大きくなったねー」と成長を感じたりもしますよ。 -- ご自身のTシャツの売上の一部を寄付されているというお話も伺いました 井上)はい、元々Tシャツと医療的ケア児というのは僕の中でつながっていなかったんですけど、宮永(雄太)ヘッドコーチや田畠(寿太郎)社長と活動についてお話をする中で助言をいただいたんです。それで「まさにやりたかったこと」と思って、寄付をしています。 --今後も寄付は続ける予定ですか? 井上)はい。Tシャツを販売して寄付をしたのは昨年で、今年も販売したので続けて寄付したいと思っています。ただ、やはり訪問して直接会い、一緒に遊ぶ活動も大切ですので、こちらも続けていきたいと考えています。 --施設を訪問された際の写真を見たら、子どもたちがいい笑顔をされていました。逆に子どもたちから受け取っているものはありますか? 井上)もちろんあります。施設で会った時、試合会場で会った時の子どもたちの笑顔もそうですし、ご家族の方も楽しんでいただいていると感じる時もそうです。バルーナーズとして家族で試合を見るという娯楽を提供できているというのは、すごくうれしく感じます。またかわいがっている子どもたちから応援されるので、「良いところを見せたい」となって気合いも入りますね(笑) --施設にいる子どもたちだけでなく、ご家族に向けて、という視点もあるわけですね。 井上)そうですね。どうしても行動が制限される部分もあると思いますので、ご家族も一緒に楽しんでほしいという思いはあります。 実は活動をやって本当に意味があったなと思った経験があります。残念なことに施設にいたお子さんが亡くなられた際、祭壇に僕と写った笑顔の写真を使われていたのです。私は足を運ぶことができず、あとから施設の方に聞いたのですが、ご家族が「一番いい笑顔が撮れたのがこの写真だったので」とおっしゃっていたということでした。お子さんとご家族にとって思い出に残る1ページに自分が関われた。それは活動を続けてきた意味を感じました。