人物を3Dプリンターで?愛知の金型会社が新たな挑戦
3D(3次元)プリンターを使った人物フィギュアの製造販売が、愛知県安城市和泉町の金型製造会社「アムト」(芦原正教社長)でこのほど始まった。フィギュアは表情や体の動きなども表現されており、金型製造の技術を生かした新たな試みとして、注目を集めている。入学・卒業時の子どもの思い出や、定年退職する上司への贈り物としての需要が期待され、値段は1体4万5000円から。同社は「会社の新事業として、軌道に乗せたい」と意気込む。 ニュースでよく見る「3Dプリンタ」とは?
親族をモデルにフィギュア試作繰り返し
フィギュアは石こう製。高さ15~25センチで、実物の10分の1の大きさになる。制作は、全身の輪郭を専用スキャナで取り込んでデータ化し、CAD(コンピューター利用設計システム)で立体の設計図を作る。この際、丁寧に仕上げないと仕上がりと実物との違いが明確に出てしまう肌の色やしわ、指や腕の節の部分は、専門スタッフが調整。受注状況によるが、1か月半ほどで完成する。 この事業を始めたのは、同社2代目で、専務の芦原章吾さん(33)。近年、金型業界には金属を出力する3Dプリンターの導入が進んでおり、大手メーカーでは金額にして億単位の装置を使っているという。アムトは自動車用部品の下請け業者としてコスト軽減を迫られる中で、CADのノウハウを生かした3Dプリンターの試用と研究、同社独自の新事業立ち上げという考えを踏まえ、2年前に3D事業部を立ち上げた。 3Dプリンターは中小企業に対する国の補助金を利用して1000万円の装置を導入。靴などの物や親族をモデルにしてフィギュアの試作を繰り返し、今年7月に受注を開始した。
「立体に残すという需要はある」と確信した
同社ホームページで予約を始めると、さまざまな問い合わせが入ったという。例えば「犬や猫などのペットをフィギュアにしたい」という話もあった。しかし、輪郭のスキャン中に動いてはならず、犬や猫を10分近く静止させるのは不可能で、見送りに。 ペットの「写真からフィギュアを作ってほしい」との要望には、写真の情報量で立体の設計図を作るのは困難であるため、フィギュアにはせず、写真に凹凸をつける加工を施して立体的に見せる商品に仕上げた。 このような難題に取り組んできた芦原さんは「現時点での技術的な限界も分かった上で、3Dプリンターのクセや使い方が分かってきた」とこれまでの取り組みを一定評価。「立体に残すという需要はある」と確信したという。
要望があれば、出張取り込みも
輪郭のスキャンは同社内で行っているが、スキャン装置は持ち運び可能なため、要望があれば、出張取り込みにも応じる方針だ。 芦原さんは事業について「今後5年間で利益を上げられるか」と目標を掲げ、「立体フィギュアは、その人のぬくもりが不思議と感じられる。世代や人をつないでいくものとして、定着させていきたい」と希望を語った。 (斉藤理/MOTIVA)