望まない妊娠①》"生後0か月で亡くなる赤ちゃん"…妊婦の葛藤と相談先
■若年妊婦のための居場所「ぴさら」とは?
ピッコラーレは、安心して過ごせる家がない、誰にも頼れないという、主に10代20代の妊婦を支えるには、相談を受けるだけではなく、《安心して妊娠中から出産後まで暮らせる居場所》が必要だと考え、2020年6月、一軒家を借りて「ぴさら」を設立した。 土屋さんによると、家庭で虐待を受けてきたという人の中には、夜寝ていると何をされるかわからず、安心して眠れない日々が続いた経験から、「安心して寝ていいよ」と言っても、朝方までなかなか眠ることのできない女性もいるという。それでも女性たちは「ぴさら」のスタッフと話し、「子どもを育てるには何ができたらいいのかな」など、少しずつ妊娠や出産、子育てをイメージし、現実に向き合っていく。「ぴさら」でともに生活をする女性同士が悩みを話し、支えあうこともある。
■本人が決めることにこだわる理由とは
「ぴさら」に来る女性の多くは、幼少期から虐待や暴力を受けており、「自分の考えを聞いてもらったことがない」「自分で選んでいいと言われた経験がない」という女性も少なくない。妊娠がわかり、それが、自分が望んでいたタイミングではなかった場合、《子どもを産む・産まない》《自分で育てる・育てない》といった選択をすることは、これまでの人生で、自分で考え、自分で選んできた人であっても葛藤が生じるものであり、ましてや、自分で選択し決定する経験をしてこなかった女性たちにとっては、「自分で決めていいんだよ」と言われても、決断することは容易なことではない。その決断をするところから、寄り添い一緒に考えるということが必要となる人もいる。
■"このシャンプーを使いたい"…自分で決める経験を
「ぴさら」での食事は、決められたものを提供するのではなく、その女性が食べたいものを聞き、スタッフと一緒に買い物にも行き、自分で食べたいものを作ることもあるという。シャンプーやコンディショナーなども、備え付けのものを使うのではなく、各自が使いたいものを選んで買うようにしている。女性たちは「普段は一番安いシャンプーを買うけど、ずっとこれを使いたいと思っていた」などと、ちょっと高めのものを買ってうれしそうにするという。シャンプーを一つ選ぶという経験であっても、女性たちには「自分で決めていいんだ」「自分は尊重されている」と感じて欲しいと「ぴさら」のスタッフは考えている。「ぴさら」を"卒業"していった女性たちが遊びにきて、将来について一緒に考える場所の提供も始まっている。