【牛すじカレー】ただものじゃないマスターが作る、地元激シブ酒場の牛すじカレー:パリッコ『今週のハマりメシ』第157回
と、すでに全身が幸福感に包まれた状態だけど、こうなってくると気になってしょうがないのが、メニューにある「牛スジカレー」(750円)の存在だ。大前提として、ご主人が作る牛すじカレーがうまいことは、わかりきっている。そして僕は大のカレー好き。このあとに家の夕食もあるんだけど......だめだ! 頼まないわけにはいかない。 お願いすると、家などで仕込んでこられたのであろうカレーを一人前、鍋で温めはじめるご主人。店内にたちまちカレーの香りが充満する。 ごはんがレンチンパックなのは、調理スペースとの兼ね合いもあっての合理的選択だろう。それを温めている光景を見て、軽々しく「ごはん少なめでお願いします」などと頼んでしまったことを反省した。 さて到着。はい、もううまい! 見た目と香りでうまい! ではいただきます。 うんうん。第一印象は、塩気がベースの割とシンプルな味わいのカレーだ。そこに爽やかなスパイス感が、まるで口のなかで弾けるように広がって心地いい。それから、やっぱり牛すじの旨味の存在感は大きく、食べすすめるごとに、甘さや辛さも少しずつ感じられてくるようなストーリー性を感じる。食べるごとにどんどん深みも増してゆく。つまり、めちゃくちゃうまい! また、惜しみなくごろごろっと入った牛すじ肉が、口のなかでとろりとほぐれる、その瞬間の快感といったら......。 まだ一度しか訪れたことがないので、このカレーが定番メニューなのか、一期一会の一品だったのかはわからないけれど、それは今後店に通うなかで知っていけばいい。 ご主人とちらほら会話をさせてもらって印象的だったのが、「日本酒はお好きですか? 私は日本酒が大好きなんですよ。ごちそうしますから、こんど一緒に飲みましょう。またヒマなときに来てください」と言ってくださったこと。店主さんと客の会話とは思えないながら、きっとご主人は常に自然体で、そんなふうに、人と人との垣根のなんて考えずにお店を営業されているのだろう。 これから機会のあるたびに寄ってしまいそうな店、「ちょみ」。とても嬉しい出会いだったけど、今日のようなちょっとした空き時間ではなく、じっくり時間を作って飲みにいかないと、その本質は理解できないような気もしている。 取材・文・撮影/パリッコ
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