タイヤ脱落、冬に注意を 交換直後に多い傾向 運輸局が注意呼びかけ 防ぐには「増し締め」有効
中国地方でタイヤの脱落事故への警戒が強まっている。冬用タイヤに替える時期に事故は多発する。中国運輸局によると、5県で登録された大型車の事故件数は2024年度は11月に23年度の総数を超え、過去最多の水準になった。本格的な冬を迎え事故が増える恐れがあるとして、運輸局は注意を呼びかけている。 【グラフと写真】中国地方5県でのタイヤ脱落事故の件数推移など 7日早朝、広島市安芸区の岡明(おかみょう)運送の整備場に社員15人ほどが集まり、大型トラックのタイヤの交換作業を進めていた。山陰方面を走る車両の場合、交換するタイヤは1台12本。ボルトのさびを拭き取ってナットで固定すると、規定の圧力で締められているかを2人がかりでトルクレンチを使って確かめた。 同社の大型トラックは約85台。11月下旬から冬用タイヤへの履き替えを始めた。タイヤは全て新品を調達し、バッテリー液を足すなど備えに努める。一橋俊秀社長は「絶対に事故は起こさない。そのためのコストは惜しまない。丁寧な作業が欠かせない」と話す。 脱落事故は24年度、中国地方で目立っている。中国運輸局によると、5県で登録された8トン以上または乗車定員30人以上の大型車の脱落事故は4~11月に10件。23年度の9件を既に超えた。 事故は冬季や、タイヤの交換作業から1カ月以内に多い傾向がある。国土交通省によると、23年度の事故142件のうち6割の87件が11~2月に起きており、また交換から1カ月以内の発生が約半数を占めた。これらを踏まえると、中国地方では24年度内にさらに事故が相次ぐ恐れがある。 また中国地方は積雪量が多いことなどから、タイヤの脱落事故のリスクが高いとの指摘もある。車両1万台当たりの事故発生件数は1・2件。関東(0・4件)や中部(0・5件)、九州(0・9件)を上回る。 国交省などのガイドラインでは、タイヤ交換後の事故を防ぐには「増し締め」と呼ばれる作業が有効とする。タイヤを交換して100キロ程度を走った後、タイヤを固定するナットが緩む場合がある。一定期間を走行後に締め直すとタイヤの脱落を防げるという。 中国運輸局と広島県警は3日、廿日市市の山陽自動車道宮島サービスエリア(SA)でトラックを対象に臨時の検査をした。トラックを呼び止めて、検査員らがナットの緩みやボルトの損傷などを確かめた。運輸局の藤川敏治・自動車事故調査分析官は「タイヤ脱落は死亡事故につながりかねない。日常点検を含め対策を徹底してほしい」と呼びかける。
中国新聞社