現在の年収は「650万円」ですが、定年後は年収が「6割程度」になると聞きました。老後も住宅ローンの返済が続くのですが、実際の給与はどのくらい下がるのでしょうか…?
住宅ローンの安定的な返済を考え、35年などの長期固定金利を選ぶ一方で、将来の収入を考えて完済できるか不安に思う人もいるのではないでしょうか。将来の返済計画を考える上で、定年退職後の収入と支出を考えることは重要です。 本記事では、定年後も一定の収入を確保するために、定年後再雇用を選択するケースを想定した収入と支出の関係について解説します。 ▼高齢者の「4人に1人」は働いている!? 平均年収はどのくらい?
同一労働同一賃金とは
定年後再雇用は収入が減る、というイメージがありますが、そもそも収入が減ることに問題はないのでしょうか。定年後再雇用に限った話ではありませんが、基本的に仕事に対する対価は「同一労働同一賃金」という考え方に基づいて決定されます。 同一労働同一賃金とは、同じ会社で働く人が同じ内容の仕事内容をしている場合において、フルタイム・短時間勤務または有期雇用・無期雇用、自社雇用社員・派遣社員など雇用形態の違いによって、賃金に不合理と認められる違いがあってはならない、という考え方です。 定年後再雇用はいわゆる有期雇用となりますが、この同一労働同一賃金の考え方に基づくと、定年前と同じ仕事をしているならば、合理的理由がない限りは、処遇を引き下げることは問題となります。
定年後再雇用者の賃金は現役世代の約6~8割
しかし実際には、定年後再雇用は現役時代と比べ、60歳を基準とすると、男性で20~40%、女性で20~30%、収入が下がるという調査結果があります。 定年後再雇用は、定年退職後に改めて雇用契約を結ぶという仕組みであり、再雇用契約時に条件の引き下げが可能です。 また、国としても、65歳まで雇用機会を提供することを求める一方で、65歳まで現役時と同じ条件で雇用することは求めていません。再雇用契約で仕事の内容や勤務時間を制限するのが一般的であるため、同一労働同一賃金の観点からも収入減は問題となりません。
老後の生活費は現役世代よりも約2割少ない
住宅ローンの返済は定額で続くため、収入が減ることに対して不安に感じる人は多いかと思います。 しかし一方で、支出に目を向けると、50~54歳をピークに年齢を重ねるごとに必要な生活費が下がっていくことが一般的です。総務省統計局の2023年家計調査の結果による、世帯主の年齢階級別にみた二人以上の世帯の消費支出は図表1のとおりです。65~69歳時点の消費支出はピーク時に比べて84%程度になっています。 図表1