【ミャンマー】国軍系ビール巻き返し図る、若者「許容」
「ミャンマービール」などを製造する国軍系ミャンマー・ブルワリー(MBL)が、不買運動により落ち込んだビール市場でのシェア回復に向けて巻き返しを図っている。イベントに参加するなどして年末需要の取り込みを狙う。クーデターで実権を掌握した軍事政権が4年近く続く中、都市部の若者の間でもMBLを「許容」する動きが見られるようになってきた。ただ、各地で抵抗が続く中、かつての「国民的ビール」の地位への返り咲きは望めない。【小故島弘善】 「国軍に協力しているわけではないのだが……」 最大都市ヤンゴンの飲食店で25日に開かれたクリスマスイベントに参加した20代の男性は言葉を濁した。イベントで売られる唯一のビールはミャンマービールのラインアップのうち高級志向の「ミャンマープレミアム」。1缶5,000チャット(約240円)と決して安くはないが、若者は続々と注文していく。 この男性は、「政治なんてここでは誰も気にしていないだろう」と続ける。普段は、プロモーションなどで安ければミャンマービールも選択肢に入ってくるのだという。 国軍による2021年2月のクーデター後、ミャンマービールは不買運動が広がり「国民的ビール」から転落。国軍に抵抗する若者グループが取扱店を爆破すると予告したこともあった。ただ、時間がたつにつれて街角の小売店やスーパー、飲食店などに商品が再び並ぶようになり、購入しても人目が気にならなくなってきた。 一方、アルコール飲料流通の関係者はNNAに、「ミャンマービールが市場シェア首位に返り咲くことはまずないだろう」と話した。キリンホールディングス(HD)がMBLから出資を引き揚げ、同社に出資する国軍系複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)の存在感が高まったことで抵抗感も残る。 この関係者は、代わりにデンマーク系「カールスバーグ」、オランダ系「ハイネケン」などが台頭しているとも指摘した。ミャンマービールの売買が「黙認」されるようになっただけの状況だとみている。