【高校サッカー選手権】15年ぶりの全国出場を決めた帝京が乗り越えた2つの壁
第103回全国高等学校サッカー選手権大会 東京都2次予選Aブロック決勝が駒澤オリンピック公園総合運動場陸上競技場で行われ、帝京と國學院久我山の間で争われた。試合は2-1で帝京が國學院久我山を下し、15年ぶり35回目の出場を決めた。 【フォトギャラリー】帝京 vs 國學院久我山 先制は國學院久我山。前半18分、左サイドからDF2 安部凛之介(3年)、ゴール中央MF18 田島遼太郎(2年)とつなぎ、混戦のなか、最後はFW9 前島魁人(3年)が決めた。続く34分、帝京はMF14杉岡侑樹(2年)のロングボールに相手GKが大きく飛び出したところを追いついたFW10 森田晃(3年)が難しい角度からシュートを流し込んだ。これが無人のゴールに入って、同点に追いつく。 後半に入ると双方、守備への意識が高くなったのか、互いのチャンスをつぶし合う一進一退の展開に。それでも、互いの時間帯を作りながら迎えた後半39分、ペナルティエリア内で倒され、帝京がPKを獲得。これをMF13 土屋裕豊(3年)がきっちり決め、追加点。これが決勝点となった。 同点弾を決めたFW10森田はゴールについて「宇宙貯金のおかげ」と語った。中学生のころから続ける、この「宇宙貯金」なるモノ。FW10森田によれば、ごみを拾って捨てるなど、小さな善行が『目に見えない貯金』として自分に返ってくるというもの。(目に見えないもの=宇宙・森田談) 「自分はチームで一番下手で練習でも『下手だ』と言われるなか、こうした大舞台で成果となって現れました」と喜んだ。またFW10森田は昨年、準決勝で敗れた際、悔しさをノートにつづり、『来年はうれし涙にしたい』と記したそうだ。試合前、このノートを読み返し、試合に臨んだ甲斐あっての同点ゴールとなった。 お互いの良さが出しあえた好ゲームを帝京・藤倉寛監督は「今年一番のゲーム内容でした」と総括した。自然とそうなったのは帝京が國學院久我山に2年連続、準決勝で敗れており、越えなければならない壁だったからこそ。より気持ちの乗った試合となったと言える。そしてもうひとつ。帝京にとっての、いわば壁はプレッシャー。多くのJリーガーを輩出した伝統校。長年、遠ざかったために期待は否が応でも膨らんでいく。しかし、そうした期待をよそにイレブンは冷静に戦っていた。 「相手のことや、何年ぶりなど意識せず、まずはサッカーを楽しむ、勝ちたい気持ちをピッチにぶつけられました」((MF8砂押大翔・3年) 「ひとつの試合に勝ちたい、その気持ちの強さが結果につながりました」(GK1大橋藍・3年) 「過去、何回出場など気にせず、自分たちのことをやってきました」(FW10森田) 宿敵。そして重圧。この2つの壁を乗り越え、帝京は晴れて全国出場への切符をつかんだ。 「長い時間かけて作り上げたものは間違っていなかった。その結果の証明」と藤倉監督。2015年から帝京高校サッカー部の監督として指導し、今年2月から順天堂大学男子蹴球部で指揮を執る日比威監督の功績に触れた。「日比監督からのバトンを落とさなくてよかった」と安どの表情が印象的だった。 (文・写真=佐藤亮太)