4カ月で75kg→55kgも…週1回投与で年6kg減という医師も認める「夢のダイエット薬」の自由診療の価格と副作用
■薬の力で脳が陥っている糖質依存から脱け出せる 「もう一つの注意点として、マンジャロで痩せるというよりは、マンジャロによって食欲が落ちるから痩せることを理解してもらうことが重要です。マンジャロを使っているからと健康管理に気を配らないような人、極端な減量を求める人は使わないほうがいいでしょう」(吉木医師) もともと痩せている人や、摂食障害(体重に対する過剰なこだわりや、食行動の異常がみられる心の病)の傾向がある人も使用してはいけない。 牧田医師も、マンジャロは「糖質中毒を脱する薬」だと説明する。 「太る原因は脂肪やタンパク質ではなく、糖質の摂りすぎです。肥満であるなら、脳が糖質依存に陥っていると思ったほうがいいと、これまでの私の著書では記してきました。けれども脳が新しい習慣を受け入れるまで、1カ月から2カ月はかかります。ですからマンジャロを使用している間に、その新しい習慣を自分のものにするといいでしょう。糖尿病ではなく痩身目的でマンジャロを使う人は、減量目標を達成したらやめていいと思いますよ」 そのほか見落としがちであるのが、食べる量が減ることで栄養素バランスが悪くなり、筋肉量が減少してしまう恐れがあること。吉木医師は定期的な診察で体組成(体脂肪や筋肉量、骨量など)を計測している。 「マンジャロはリバウンドしにくい薬といいますが、脂肪より筋肉ばかりが落ちてしまうと、そうとも言えません。今後太りやすい体になってしまいます。タンパク質を十分摂って食事のバランスを管理し、ある程度運動する習慣をもつことも大切です」 肥満気味の人がマンジャロをきっかけにダイエットに成功し、健康的な生活習慣を身に付ける。それが治療目標になるといい。 「GLP-1ダイエットを行った方の中で、75キログラムの女の子が4カ月で55キログラムにまで体重を落としました。その女の子は『先生は私を人間に戻してくれた』と目を輝かせていました。何度もダイエットにトライしてリバウンドした人たちは、自分はダメだ、何をやってもできないと、強い自己否定感を大抵もっています。それが『私はやればできる』と思えるようになる、それこそがマンジャロの一番の効果ではないでしょうか」(同) 注射で痩せる。というより注射で食べすぎを防ぎ、太らない量を体で覚える。従来の努力や我慢ありきのダイエットで失敗した人は、一考の価値があるだろう。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月15日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 笹井 恵里子(ささい・えりこ) ジャーナリスト 1978年生まれ。本名・梨本恵里子「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、プレジデントオンラインでの人気連載「こんな家に住んでいると人は死にます」に加筆した『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)、『老けない最強食』(文春新書)など。新著に『国民健康保険料が高すぎる! 保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)がある。 ----------
ジャーナリスト 笹井 恵里子