「頭のいい人」の定義は、以前とは大きく変わった…現代社会で、「頭のよさ」を決定づける存在と能力とは?
<仕事の難易度が上がり、「自己完結」の仕事がほぼなくなった現代における頭のよさは、人間関係の中でできる>
読者が選ぶビジネス書グランプリ2024でビジネス実務部門賞を受賞したのは、『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社、以下「本書」)。 ●日本だけ給料が上がらない謎…その原因をはっきり示す4つのグラフ 著者は、ティネクト株式会社代表取締役を務め、累計1億2000万PVを誇るビジネスメディア「Books&Apps」を手がける安達裕哉さんです。 コンサルタントとしての22年間で得た知見を、7つの黄金法則と5つの思考法に凝縮したのが本書です。48万部突破の大ヒットとなった理由とは? 安達さんの「人生に影響を与えた本」についてもお聞きします。※グロービス経営大学院の教員である米良克美さんから安達さんへのインタビューを再構成しています。(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です) ■この20年で「自己完結」の仕事がほぼなくなった ──ビジネス実務部門賞受賞、おめでとうございます! まずは感想をお聞かせください。 知らせを聞いたとき、とても光栄に思いました。本書の「7つの黄金法則」は、私がコンサルティング会社に勤めていた当時に部署全体で徹底していたこと。中小企業の社長と話す際に実践していたことが評価されて、いろいろな方に読まれたのは驚きでしたし、とても嬉しいですね。 ──本書がさまざまな立場の方に刺さった理由は何だとお考えですか。 まずビジネスの世界では、ここ20年で仕事の難易度が上がったことが大きいと考えています。知識労働が増えるなか、ほとんどの仕事が一人では完結せず、人との連携や協働によって成り立つものになった。また、押しが強い一方的なコミュニケーションをとっていると、職場ではパワハラ、プライベートではモラハラといわれるようになりました。 こうした背景から、人の話を聞いて理解する必要性が高まっています。だからこそ、「話す前に何を考えるか」という本書のテーマに、幅広い方が興味をもったのではないでしょうか。 ──「はじめに」では、“読み返さなくていい本を目指した” と書かれていたのが印象的でした。 このフレーズは、本書の編集者である淡路勇介さんが考えたものです。何かを「知っている」と「実践できている」には、かなり大きなひらきがあります。私がビジネスの文章を書くときに大事にしているのは、内容の「わかりやすさ」だけでなく「実現しやすさ」。本書も、一度読んだだけでも取り組めるかどうかを重視しました。 ■頭のよさは、「人間関係の中」にできるもの ──改めて、「頭のいい人」とはズバリどんな人だとお考えですか。 従来は、学歴があるとかIQが高いとか、自己完結できる定義でした。ですが、編集者の淡路さんと話すなかで、「頭のよさは、人間関係の中でできるもので、 人の間にある」という結論にたどり着きました。 これは人間関係論を専門とする大学教授から聞いたお話とも符合しました。人間関係の悩みも、個々人の中にあるのではなく、人と人とのやりとりの間に生じるものですよね。同様に、頭のよさも自分と他者とのやりとりのなかで見出され、他者が自分のことをどう思っているかで決まっていく。この根本的なコンセプトについて、本書では、より伝わりやすいように「頭のよさは他者が決める」と表現しました。