イギリスの芸術教育は「危機的状況」。最新調査で芸術文化に対する公的支援が欧州最低レベルに
ウォーリック大学と慈善団体のキャンペーン・フォー・ジ・アーツは、このほど「The State of the Arts(芸術の現状)」と題した報告書を発表。イギリスの芸術文化に対する政府支出が、欧州で最低水準にあることが明らかになった。 イギリス国内の芸術に関する資金、教育、雇用のデータを調査したこの報告書によると、芸術文化団体支援を管轄する政府機関、デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は2009年から2023年にかけて主要な財政支援を18%削減。イギリスの文化支出は1人当たり260ドルで、ヨーロッパ全体の平均より44%も低くなっている。 また、2010年から2022年にかけて、イギリスでは1人当たりの文化支出が6%減少。それに対し、ドイツ、フランス、フィンランドでは、同じ期間に文化支出をそれぞれ22%、25%、70%増加させている。 特に減少が目立つのが芸術教育の受講者だ。報告書ではその原因を、予算削減と公立学校における芸術教育の「軽視」にあるとし、この問題が「危機的状況にある」と警告。実際、イギリスの統一試験、GCSEおよびAレベルにおける芸術科目の選択者は激減し、2010年からそれぞれ47%減と29%減となった。 同報告書ではまた、イギリスの芸術団体支援を行う主要な機関であるアーツカウンシルの資金支援が大幅に縮小し、イングランドで18%減、スコットランドで22%減、ウェールズで25%減、北アイルランドで66%減となったことも示されている。 今回の調査は、10年以上にわたる芸術への公的助成削減の影響に焦点を当てているため、それを補完するさまざまな民間資金との比較はなされていない。一方、アーツカウンシル・イングランドでは、2022年に芸術分野の民間資金に関する報告書を発表。それによると、民間からの資金額は7億9900万ポンド(約1600億円)で、その44%を個人の寄付が占めている。
ARTnews JAPAN