<センバツ21世紀枠>候補校紹介/9止 具志川商(九州・沖縄) 「デパート」運営から学び
「具商デパート」といえば、具志川商の地元・沖縄県うるま市では知られたイベントだ。具志川商が毎年、商品販売を模擬体験し、昨年度は2日間で約6700人が訪れて756万円を売り上げた。今年度は新型コロナウイルス感染拡大で制限されたが、校内生徒向けとインターネット販売を実施。近年、野球部員が役員や店舗の店長、副店長を務めることが増え、イベントを盛り上げる重要な役割を担っている。周到な準備が必要な伝統行事への積極的な取り組みは、グラウンドでも生かされている。 企業とのやり取りや接客を通じて「相手の気持ちを知る大切さを学んだ」と大城勢武太(せんた、2年)。野球では対戦相手の考えやスキをうかがう意識につながっているという。昨秋の沖縄大会準決勝の興南戦。一回に失策を重ね、浮足立つ強豪を逃さず攻め立てて逃げ切り勝ちした。主要県大会で初の決勝進出を果たすと、初出場した九州大会でも勝利を挙げる躍進を見せた。 選手たちは、具商デパートへの参加など「学校生活や私生活が野球部の新しい歴史につながった」と口をそろえる。具商デパートで「専務」を務めた前主将の安田風太さん(3年)は「掃除をしっかりやったら打率も上がった。『だるいな』とおろそかにしていた時は、野球でもきつい練習から逃げていたと気づいた」と振り返る。2019年7月に就任したOBで建設会社社員の喜舎場正太監督(33)が「グラウンドで頑張るのは当たり前。学校、家と合わせて、三つの顔が同じでないと安定した力が出ない」と訴えてきた。 主将の粟国(あぐに)陸斗(2年)は昨秋、九州大会に初めて出場し、上位進出への壁を感じたという。「あと一本が足りない。それは技術だけではなく、日ごろの練習、学校生活の積み重ねだと思う」 一人の高校生として、何事にも全力で取り組むことこそが野球を高めていく。選手たちはそう確信して日々、白球を追いかけている。【吉見裕都】=おわり