「弾ける痛快さと実用性を両立したホットハッチの記念碑」 モータージャーナリストの高平高輝がルノー・メガーヌR.S.ウルティムほか5台の輸入車に試乗!
外車に乗って思った!「百聞は一見に如かず」
モータージャーナリストの高平高輝さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! キャデラック・エスカレード、ケータハム・セブン340R、シボレー・コルベット、フェラーリ296GTS、ルノー・メガーヌR.S.ウルティムに乗った本音とは? 【写真27枚】モータージャーナリストの高平高輝さんがエンジン大試乗会で試乗した5台の注目輸入車を写真で見る ◆乗ってみなけりゃ分からない 「想像していたのとまったく違うんですねえ」とは一緒にエスカレードに乗ったEPCゲストの言葉である。それです。本当におっしゃる通り。日々、次々と新型車に乗っていると、慣れてしまうというか忘れがちになるけれど、私たちが求めているのは大小にかかわらず新鮮な驚きや発見なのだということに改めて思い至り、自らを省みた。スマホで検索しただけで知ったつもりになっている場合ではない。誰が何と言おうと、新しい発見や気づきは自ら経験しなければ本当に自分のものとはならない。「百聞は一見に如かず」というように「Drivingis Believing」なのである。そんな驚きに満ちているのが“ガイシャ”であり、なぜそういうことになっているのか、その奥に秘められている理由を知りたくなるとこれがまた楽しい。そのきっかけの一助になることが私たちの役割である、と改めて心に刻んだのである。 ◆キャデラック・エスカレード「きわめて先進的」 逞しくタフでだけど、ドタバタゆさゆさするトラック派生SUV、などというイメージはとっくに過去のものだ。2020年末に国内導入された現行型(5世代目という)エスカレードはこれまで通りのフレーム構造を採りながら、四輪独立サスペンション(+エアサスペンション&電制ダンパー)を採用したことで、すっかり現代的なボディ・コントロールを備えている。これは7人乗りのスポーツだが、つい先日8人乗りの“プレミアム”グレードも追加された。巨体を前にするとどうしても身がすくむが、走ってみれば、大らかでフラットな乗り心地に加えて、狙ったラインを正確にたどれるハンドリングも併せ持つ。コルベットと同系統の6.2リッターV8は2.7トンあまりの車重に対しても不足なし、ATは何と10段!である。他にも車載用としては初のOLEDスクリーンを備えるなど、キャデラックに相応しく、きわめて先進的である。まさしく悠揚迫らぬ、ゆったりとした王者の風格。そのサイズを持て余さずに使える人にとっては唯一無二のラグジュアリーSUVである。 ◆ケータハム・セブン340R「硬派で剥き出し」 クルマ好きならどうしても気になるのが、いわゆる“セブン”ファミリーである。その最新作がこれまでの270に代わる340で、SとRの2種類があり、よりハードコアでサーキット志向の硬派が340Rである。これまでの1.6リッター4気筒に代えて、172psと17.7kgmを生み出すフォード・デュラテック2リッター4気筒を搭載。Rはリア・スタビ付きスポーツ・サスやLSD、15インチのホイール、カーボンのダッシュボードなどを装備。時節柄パワートレインの調達には苦心しているらしいが、十分な数を確保しているという。340という数字は500kgの車重に170ps(正確には540kgと172ps)エンジンという、1t当たりの馬力を示すことは従来通り。相変わらず素手素足で岸壁にアタックするような硬派で剥き出しの手ごたえは、ほかの車では得られない。薄っぺらいバケット・シートにシート・ヒーターが備わっていることは嬉しい発見だった。こういうのを胸張って作り続けてくれているだけで、それをわざわざ選ぶエンスーがいるというだけで感激です。そんないっぽうでプロジェクトVなんて、すごいぞケータハム! ◆シボレー・コルベット「世界一売れている」 世界一のご長寿スポーツカーであるコルベット(初代のデビューは1953年!)が現行C8シリーズでミドシップに生まれ変わった時には本当に驚いた。でも伝統的なFRコルベットのファンは受け入れるのか?と心配したが、依然として新型も世界一売れているスーパースポーツカーである。C8コルベットはミドシップされる6.2リッター V8エンジン以外、オール・アルミ・ボディもサスペンションも8段DCTもすべて新開発で、さらに史上初めて最初から右ハンドル仕様も用意されている。すでによりワイドなボディに自然吸気5.5リッターDOHCV8を積む高性能版Z06も登場済みだが、スタンダード・モデルでもその実力は世界レベルである。大排気量V8の余裕は街乗りでも明らかで、絞り出すのではなく知らないうちにパワーが滑らかにあふれ出す感覚は独特で、いっぽう回せば緻密にリニアに盛り上がっていくのは自然吸気ならでは、である。いささか劇画的なスタイルやインテリアには好き嫌いがあろうが、ゆっくり流しても飛ばしても洗練されている。きっとスポーツカーの歴史に残る一台となるだろう。シボレーの、米国の底力を体感してほしい。 ◆フェラーリ296GTS「フェラーリにしかできない」 ステアリングに一切のスイッチを付けないのがマクラーレン流だとしたら、最初から最後までステアリングを握ったままで操作できるのがフェラーリ、いやF1流というべきか。無数のモード切り替えスイッチだけでなく(それにしてもちょっと煩雑ではないか)、今や始動ボタンさえスポーク上のタッチ・スイッチに置き換えられているのだから、かつてステアリングやペダルの位置関係が不自然とこぼしていた昭和オヤジは、ずいぶん遠くにきたもんだ、と感慨にふけること暫し。これまでのV8ミドシップ・シリーズに代わるPHEVの新世代モデルが296、GTSは巧妙なリトラクタブル・ハードトップを備えたスパイダー版である。時代の要求とはいえ、モーターと電池の搭載を考慮してコンパクトさを重視した3リッター 120°V6ツインターボをいちから起こすなんてフェラーリにしかできない芸当だ。296GTBはF8トリブートより140kg、このGTSはさらに70kg重いというが、システム最高出力830psは伊達ではなく0-100km/h2.9秒と不変。そしてもちろん切れ味抜群、しかも強さとしなやかさも併せ持つ名刀である。 ◆ルノー・メガーヌR.S.ウルティム「有終の美」 みんな大好きルノー・スポール(R.S.)がアルピーヌに統合される形で幕を閉じることはすでにご存知の通り。最後の正統派ホットハッチとも言うべきメガーヌR.S.もスタンダード・モデルは既に終了。有終の美を飾るのが正真正銘、最終特別モデルのメガーヌR.S.たる、その名も“ウルティム”である。ベース・モデルはR.S.トロフィーで、ほぼ一年前に国内導入が発表された。R.S.の設立年にちなんで世界で1976台の限定モデルである。内外装の特別仕立てを除けば中身はトロフィーとほぼ同じ。サスペンションは硬派な方のシャシー・カップで、エンジンはこれまで通りの1.8リッター 4気筒ターボ、後輪操舵の4コントロールとHCC付きダンパーも同様。ただし19インチ・ホイールはさらに軽量のフジライトとなり、タイヤはブリヂストン・ポテンザS007を装着。ニュルブルクリンク北コースでFF最速タイムを何度も書き換えたロラン・ウルゴンのサイン入り記念プレートも付く。弾ける痛快さと実用性を両立したホットハッチの記念碑だ。 文=高平 高輝 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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