“ピンピンコロリ”は1割…人生の最期を“具体的に”決めておくススメ 尊厳死法制化の重要性
政策アナリストの石川和男が12月28日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。イギリス議会下院で11月29日、「安楽死」に関する法案が賛成多数で可決されたことに関連し、「安楽死」と「尊厳死」の違いや日本における現状や課題について専門家と議論した。
イギリス議会下院は11月29日、終末期の成人患者が薬物の投与などによる「安楽死」を選ぶ権利を認める法案を、賛成多数で可決した。今後、2回目の下院採決を経て、上院で審議される。 欧米では、終末期の患者は苦痛に耐え続けるのではなく、尊厳を保ったまま最期を迎える権利があるとして、「死を選ぶ権利」の法制化や議論が進んでいる。一方で、こうした動きに対して患者が周りに介護や経済面の負担をかけないようにと死を選ぶことにつながるおそれがあるなどとして、反対の声も上がっている。 番組にゲスト出演した日本尊厳死協会副理事長の野元正弘氏によると、日本国内では「安楽死」や「尊厳死」に関する法制度はまだ整備されておらず、医学会や厚生労働省が定めた「尊厳死」に関する“ガイドライン”が存在するのみ。終末期の延命治療について、患者本人による事前の明確な意思表示がある場合や家族の意見が一致している場合は問題ないが、ずれが生じている場合やはっきりしない場合は「(医療)現場は動けないので、困ったときはまず延命する。あとで(もっと治療すべきだったなど)法的な問題になると大変なため。医学的、科学的にはあまり可能性のない延命をしてしまう」と言及。“ガイドライン”は事後の法的な訴えに対抗できる手段にはならず、「尊厳死」に関する“法律”の整備が必要だと訴えた。 また、大きな病気の症状(発作)が始まって24時間以内に亡くなる、いわゆる「ピンピンコロリ」は「約10%」だと明かし「今も昔も、海外でも同じ。苦しまないで最期はすっと逝きたいというのは多くの方のご希望だが、そうはいかない。9割以上の人は、その後の介護など何らかの措置が必要になる」と述べた。 そのうえで「だからこそ、自分の意思を事前に家族やまわりの人に話をしておくことが重要。それも漠然とではなく、例えばガンで亡くなるとき、白血病で亡くなるとき、交通事故で亡くなるとき、心筋梗塞、脳梗塞…様々なケースにおいて、胃ろうを作るかや呼吸器を作るか、点滴をするかなど具体的な意思表示が必要」だと指摘した。 そのほか、「尊厳死」の法制化のなかでは生命保険の取り扱いや事前に意思を託す代理人制度の確立などが重要だと指摘したほか、医療費や介護費を削減するための議論とは必ず分けて行う必要があると警鐘を鳴らした。 石川は「ピンコロは1割。(自身の最期に関する)意思を出しておくというのは、自分たちの命を救ってくれる医療現場の人たちにも重要なこと。また、いつまでもガイドラインのままではなく、法制化が必要。ひと昔前までは自然死が多かっただろうが、これほど高齢化が進むと長生きすることが社会問題化、リスク化している。そうなった以上は、リビング・ウイル、最期の自分のあと始末が重要。ぜひ、政治の場での議論を期待したい」と締めくくった。