1933年の開業時から変わらないガスビル食堂「ビーフカレー」
登録有形文化財・大阪ガス本社8階にあるガスビル食堂
1933年の開業時から変わらないガスビル食堂「ビーフカレー」報告:岡本ゆか 撮影・編集・ナレーター:柳曽文隆 音楽:LIKALIFE「約束」THE PAGE大阪
大阪市中央区にある「大阪ガス」の本社ビル、通称「ガスビル」。1933年に建てられ、2003年には「登録有形文化財」に登録された歴史のあるビルだ。その中にも歴史のある空間が存在する。それはこのビルの完成とほぼ同時に誕生した同ビル8階の「ガスビル食堂」だ。開業時から変わらないメニューがあると聞き訪ねてみた。
1933年開業のガスビル食堂、変わらない「ビーフカレー」
「ガスビル食堂」は食堂と名がつくものの、社員が利用するものではなく一般の人が利用できるスペースだ。しかし、エレベーターを降りた瞬間、高級感漂う空間には驚いてしまう。 1933年3月17日にガスビルが完成し、この食堂は同年3月29日に開業。メニューを開くと「昭和8年の開業以来、当店の洋食メニューは濃厚なデミグラスソースに代表されるように手間暇かけた伝統的な深い味わいのお料理です」という赤い文字が目に入る。 開業当時、調理には当時はまだ珍しかった「都市ガス」を使用し、本格的な欧風料理を提供。ガスビル食堂・マネジャーの波々伯部(ほほかべ)泰典さんは「都市ガスによって、こんなにモダンで快適な暮らしができますよということを広めるのも大きな役割でした」と話す。 その中でも創業当時から変わらないという料理を紹介してもらった。「ビーフカレー」は創業当時からの名物。ライスにルーをかけた瞬間、大きな牛肉のかたまりがころがり、香りも食欲をそそる。 食べてみると、その牛肉のやわらかさとうまみが口いっぱいに広がり、ガス炊きのふっくらライスと絡むおいしさは、ほかでは味わえないものだろう。
ギリシャの家庭料理に由来「ムーサカ」
「ムーサカ」もガスビル食堂を代表する料理だという。ギリシャの家庭料理に由来するもので、同食堂の3代目料理長が本場の羊肉を牛肉に替え、デミグラスソースとマッシュポテトでオシャレにアレンジしたものとなっている。テーブルに出された時の香ばしさと、口にいれた時の食感や肉のうまみがたまらない。
「ハートセロリ」は元会長のこだわりが始まり
氷が敷かれた細長い皿にのって出てきたのは「生セロリ」。こちらも創業当時からつづくメニューだという。創業当時の大阪ガス・片岡直方会長は「本物の西洋料理にセルリー(セロリ)は欠かせない」と、種子をカリフォルニアから取り寄せ、自ら栽培して提供していたそうだ。現在は自社で栽培したものではないが、素材はこだわったものだ。 というのも、セロリの中心部分、一株から1本ないし2本しかとれない貴重な部分を提供。口に入れ、かんだ瞬間のほのかな甘みは、セロリのイメージを変えてしまうほどのおいしさ。ここでは「ハートセロリ」とも呼ばれているそうで、食べるとその意味もわかるような気がした。