ごみ焼却広域化 施設候補地巡り自治体間に「溝」 枠組み先送り 静岡県東部5市町
静岡県のマスタープラン(基本計画)で示された東部3市2町で協議が進むごみ焼却施設の広域化の枠組み決定が来年度以降へ先送りされたことが、23日までに関係者への取材で分かった。当初は年内に各市町が広域化への参加意思を示す予定だったが、単独整備を模索する裾野市と長泉町が態度を保留した。広域化に前向きな三島、熱海、函南との5市町での議論は来年度も続き、枠組みが決まらぬまま建設候補地の選定に進む。
5市町は2023年度から検討に入り、各市町の参加の判断材料になる実現可能性調査を24年度に実施した。10月にまとまった調査では、施設規模や財源計画などを総合的に検討し「広域化のメリットが認められる」との結果が出た。ただ、内容は既存施設の状況や近年の実績に伴う試算にとどまる。施設の規模や導入機能の具体的な検討は、広域化に参加する市町の決定後に持ち越され、詳細な分析には至らなかった。 三島、熱海、函南の3市町は、財政負担の軽減を主な理由に広域化へ前向きだ。一方、裾野市と長泉町は単独整備や別の枠組みの広域化などとてんびんにかける。水面下で熱海市が示す建設候補地から地理的に遠く、中継施設の設置検討の必要性が生じ、運搬費もかさむことが後ろ向きな背景にある。より近い別の候補地となった場合に参加する余地を残すため「候補地選定が先」と主張し、判断を見送った。 実現可能性調査では25年度に建設地選定、基本構想に着手し、26年度までに建設地が決定する前提で、運用開始まで約12年間を要するとされた。各市町とも現行施設の耐用年数が迫り、36年度運用開始のスケジュールは維持する方針だ。 整備地だけでなく導入機能や負担割合など決めるべき要件は多く、住民理解も必要になる。財政状況や立地環境が異なる各市町の思惑は異なり、議論の長期化も懸念される。決断の先延ばしは物価高騰に伴う建設コストの増大を招きかねず、広域化に前向きな市町からは「時間的余裕はない。早く議論を進めるべき」との声も聞こえる。