横浜高が甲子園を決めた理由
クリーンナップはプロの弟と監督の孫
今大会の横浜は第3シード。下馬評は決して芳しくなかった。 渡辺監督は守備を徹底して鍛え、守り勝つチームを念頭に置いていた。藤沢清流との2回戦、湘南学院との4回戦では思わぬ接戦を強いられている。 左腕の伊藤将司は3回戦以降の6試合をほぼ一人で投げ抜いた。最速135kmながら打たせて取るピッチングが試合を重ねるごとに冴え、8回コールドで圧勝した東海大相模との準決勝、そして平塚学園との決勝戦では連続完封を果たした。ガッツがあり、好リードと強肩で伊藤を支える恋女房・高井との息もピッタリだった。 サードの川口凌は堅守に加え、俊足&強打のリードオフマンとして活躍。4割を超える打率を残したセカンドの松崎建造との1・2番コンビは対戦校にプレッシャーを与えた。 3番のセンター浅間大基と4番のショート高濱祐仁は、桐光学園との準々決勝でプロ注目の左腕、松井から豪快な一発を放ってチームを逆転勝利に導いた。高濱は千葉ロッテマリーンズの高濱卓也内野手を兄に持つ。守備と走塁を合わせた三拍子が揃った183cm、87kgの大型内野手で、来年のドラフト会議の目玉選手の一人になるはずだ。 5番はファーストの渡辺佳明。指揮官のお孫さんである。幼少時に横浜高のエースだった松坂大輔と遊んだこともある。「横浜で野球がやりたい」という一念で注目を浴び、他の選手よりも厳しく見られることを承知の上で名門校に飛び込んた。勝負強い打撃を買われて1年秋からレギュラーを獲得したが、決勝戦はノーヒット。「個人的には満足していない」と甲子園での巻き返しを誓った。 対戦投手によっては2番を務めることもあったライトの根本耕太は、広い守備範囲とシュアな打撃が光った。決勝戦では9番に入り、8番・伊藤のレフト線二塁打で1点を先制した直後の一死二塁から右中間を破る二塁打を一閃。貴重な2点目をチームにもたらし、川口のライト前適時打につなげた。 8人が2年生の若いチームは、この予選で逞しく成長した。全国最多190校の激戦区を勝ち抜いた名門に甲子園での期待も高まってくる。渡辺監督は「そう甘くはないでしょう」と謙遜しながらもプライドをのぞかせる。 「力のあるチームを倒して優勝したことは、このチームの糧になる。結果にとらわれることなく、自信を持って戦わせてあげたいですね」 決勝前夜。小林は、ベンチに入れなかった22人の3年生全員の思いを込めて、一通のメールを長谷川に送った。 「頑張れよ、と。さりげない言葉の中にすべての思いを込めました」 長谷川から返ってきた文面もまたシンプルなものだった。 「最高の応援を明日も頼むぞ」 これ以上の言葉はいらない。献身的な3年生に引っ張られ、支えられた無限の可能性を秘めた2年生たちが、プレッシャーとは無縁とばかりに躍動する横浜の「熱い夏」は、8月8日開幕の甲子園大会から第2章に突入する。 (文責・藤江直人/論スポ)