衛星「実践19号」、種子の突然変異育種の研究に貢献・中国
【東方新報】中国で初めての回収再利用型の人工衛星「実践19号(Shijian 19)」は、軌道上で10日余りを過ごした後、無事地球に帰還した。24日には衛星が運んだ新しい「宇宙の種」が北京に届けられた。 「実践19号」は「アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)」や「中国メコン協力(Lancang-Mekong Cooperation)」といった国際協力の枠組みを活用して、タイやパキスタンを含む複数の国々の綿花、菜種、瓜、果実などの遺伝子資源を宇宙に運んだ。 中国農業科学院作物科学研究所の劉録祥(Liu Luxiang)副所長は中国新聞社(CNS)の取材に応じ、「これはアジア太平洋地域の突然変異育種の分野における国際協力の重要な成果であり、地域の食糧安全保障を強化するものだ。突然変異育種分野において中国は世界をリードしている。中国は過去数十年にわたり、宇宙突然変異誘発法を用いて新しい作物品種を育成し、社会と経済に多大な利益をもたらしてきた」とその意義を強調した。 中国は1987年にはすでに再利用可能な衛星を用いた宇宙育種研究を開始し、06年に打ち上げられた「実践8号」は、「種子専用の宇宙列車」と呼ばれ歓迎された。 現在「中国農業科学院作物科学研究所」のホールには、宇宙で育てられた種から実った作物の品種を並べた透明な瓶が展示されている。これらの品種は、高収量、強い耐病性、耐塩性などの特徴が備わっているという。 劉氏は「宇宙で育てる種子は、厳格な審査を受け、最も優れたものだけが選ばれる。純度、遺伝子の安定性、高い発芽率など優れた特徴を備え、高い潜在能力を持つものでなければならない」と強調する。 また劉氏は「宇宙飛行中の種子における遺伝子変異はランダムに起こり、多様性を高めることにつながり、それが新しい遺伝資源を作り出す上で重要な要素となる。遺伝資源が豊富なほど、新しい作物品種を開発する際に多くの選択肢を持つことができる」と説明している。劉氏によれば、安定した遺伝資源と栽培品種を交配させることで、既存の作物を優れた形質で強化し、優れた品種をさらに優れた品種にすることができるのだという。 劉氏は「実践19号」が持ち帰った宇宙の種子から、現代の農業のニーズにより適合する変異体が、さらに得られるだろうと期待している。 「世界の食糧需要は着実に増加しており、新たな遺伝資源の開発は食糧生産を促進する効果的なアプローチだ。気候変動が作物、特に主食となる作物に及ぼす負の影響に対処するためには、新たな変異形質を手に入れ、環境変化に適応できる品種を作り出す必要がある。また、人びとの栄養に対する要求を満たすための健康的な食品の遺伝資源を選択する必要性も出てくる。例えば、高血糖症の人向けの難消化性でんぷん食品などだ。宇宙突然変異誘発法で、難消化性でんぷんを多く含む小麦や米の品種を開発することも可能だ」、劉氏はこのように説明する。 劉氏は「我々は、中国国内の14億人以上の食糧安全保障を確保するだけでなく、世界的な食糧安全保障の問題にも目を向ける必要がある。食糧安全保障の課題に取り組む発展途上国、特にアフリカ諸国を支援する国際協力が『実践19号』によってさらに進むことを期待している。これは中国の責任であり約束である」と、この研究の人類全体に対する意義を強調している。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。