ワードセンスは「現役最強」 麒麟・川島が「ラヴィット!」MCを勝ち取った「伝説の切り返し」とは
ずば抜けたスピード
その翌年には川島がMCを務める朝の帯番組「ラヴィット!」(TBS系)が始まった。川島自身も冗談交じりに「あのフレーズがTBSのスタッフに評価されて『ラヴィット!』の仕事が決まったのではないか」という趣旨のことを語っていたことがあった。そのぐらい会心のフレーズだったのだろう。 川島のワードセンス芸の魅力は、精度、スピード、わかりやすさの3つの要素を備えているところだ。「精度」というのは「センス」とほぼ同じ意味なのだが、彼の場合は単にそこが優れているだけではなく、言葉をひねり出す速さもずば抜けている。誰よりも先に誰よりも鋭い言葉を繰り出す。「ラヴィット!」はそんな彼のワードセンス芸を軸として成り立っているような番組である。 しかも、川島が発するフレーズは実にわかりやすい。特定の層の人にしか通じないような難しい言葉はほとんど使わず、誰にでも伝わるようなわかりやすいたとえをすることが多い。ただ、伝わりやすいからといって、ありきたりだったり、どこかで聞いたことがあるような言葉だったりはしない。そこがまた非凡なところである。 川島は落ち着いた低音ボイスの持ち主だが、芸人としては声が通りにくいという欠点もある。ただ、彼はその弱点を克服するために、言葉の切れ味をどこまでも鋭くすることを目指した。その結果、彼はワードセンス芸の第一人者となった。 間口の広いわかりやすいフレーズで大衆を魅了する川島は、どんな状況でも無限に笑いを生み出せる「笑いの永久機関」である。 ラリー遠田 1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。 デイリー新潮編集部
新潮社