日本の株式市場が外国人投資家に「避けられてきた」根本的な原因
国内市場において、株式の持ち合い解消が進んでいる。30年以上も前から指摘され続けてきた問題であり、遅きに失した感もあるが、解消が進むこと自体は前向きにとらえてよいだろう。 【写真】20年後も一流であり続ける「日本唯一の巨大企業」の名前
「持ち合い」はなぜダメなのか
日本の株式市場には、上場企業が相互に株式を保有するという慣習があり、これが市場の効率性や透明性を阻害し、株価低迷を引き起こす原因のひとつとなってきた。この問題は長年、指摘され続けてきたが、企業側に率先して問題を解決する姿勢は見られなかった。 その結果、各国の機関投資家の多くが日本株を投資対象から外す状況となっており、かつて世界の主要市場のひとつだった日本の株式市場は、事実上、アジアのローカル市場に格下げとなっている。 株式の持ち合いは、なぜ企業のガバナンスを歪め、市場の効率を低下させるのだろうか。最大の理由は、所有と経営を分離するという株式会社の原理原則をないがしろにしてしまうからである。 株式会社というのは所有と経営をあえて分離させ、所有権を株主に帰属させるところが最大の特徴となっている。所有者(株主)は直接経営にタッチする必要がないため、不特定多数から多くの資金を集めることができる。これが株式会社を選択する最大のメリットである。 つまり株式会社として活動する以上、株主の権利がしっかり守られなければ、そもそも株式会社を上場させる意味がなくなってしまう。この手の話をすると「株主資本主義はケシカラン」といった意味不明の意見が出てくることが多いのだが、この考え方は根本的に間違っている。
海外投資家が日本株市場を避ける理由
もし所有と経営を分離することを望まないのであれば、わざわざ株式会社を選択する必要はなく、株式会社であったとしても株式を上場しなければ済む話である。諸外国には、大企業でありながら所有と経営の分離を望まず、株式会社を選択しなかったり、非上場のまま経営を続けるという会社はたくさんある。 わざわざ株式会社を選択し、あえて株式を上場する以上、株式会社の原理原則に従うのが企業の責務と言えるだろう。株主が会社の所有者であり、最終的な経営方針を決めるという原理原則に則った場合、上場企業が相互に株式を保有することは株主の権利を著しく侵害してしまう。 企業が相互に株式の取得を行った場合、それぞれが相互の大株主ということになり、互いに議決権を行使しない方が双方の経営陣にとって得をする状況になってしまう。そうなると株式会社でありながら、株主総会を通じた企業のガバナンスが成立しなくなり、経営陣はいくらでも自分たちに都合のよい経営ができることになってしまう。 こうした現実があるため、諸外国では株式持ち合いというのは事実上、禁止されており、そのような行為をする企業には投資をしないというのが大原則となっている。ところが日本の場合、経営陣の保身などからこうした原則が無視され、相互に株式を持ち合うという慣行が長く続けられてきた。 その結果、まともな投資家は日本市場を避けるようになり、結果的に十分な資金が投入されないため、資本効率も低いままで推移している。世界でもっとも著名な投資家の一人であるウォーレン・バフェット氏は、つい最近まで、決して日本企業には投資しないことで知られてきたが、その最大の理由は、日本企業の不透明性にあるとされている。