防犯カメラでは安全にならない?山手線などはすでに100%…実際の効果は? 設置否定派の弁護士「なんとなくのイメージで正当化されていくのはどうなのか」
電車内の至る所で見かけるようになった「防犯カメラ」。実は去年10月から設置が義務化され、首都圏などの利用者が多い路線や新幹線全線が対象に。山手線などJR東日本の首都圏在来線の設置率は100%にのぼる。きっかけは2021年、小田急線や京王線の車内で起こった殺傷事件。密室の車内の中で多くの被害者が出ることとなり、国での議論が加速した。 【映像】山手線新車両の防犯カメラから見た画角 そんな中、4月に福岡市交通局がスタートさせたのは、「リアルタイム防犯カメラ」の運用。地下鉄3路線に設置され、非常時には交通局がリアルタイムで車内の様子を確認することができ、犯罪防止に役立てるとしている。 ネットでは「犯罪の抑止力になる」という声があがる一方で、危機感を募らせているのが日本弁護士連合会だ。運用ルールが決まっておらず、肖像権侵害は避けられないとして反対。また、権利侵害を上回るほどの防犯効果についても、そもそも実証がされていないとしている。 防犯カメラ設置の意義と、運用ルールについて、『ABEMA Prime』で専門家と考えた。
■“防犯カメラが犯罪抑止に”はデータなし? 弁護士「証拠を示して」
姪浜法律事務所の武藤糾明弁護士は、「防犯カメラが本当に役に立っているかは、客観的に検討する必要がある。起こった犯罪の検挙につながりやすいのは確かだが、それと抑止効果は分けて議論すべきだ」と述べ、過去の事例を挙げる。 「警察庁が2009年からJR川崎駅東口で、防犯カメラを路上に設置して犯罪が減るかを実験した。すると、そのエリアは確かに減ったものの、周辺では逆に増えてしまった。全体でトントンだと、カメラを増やした分プライバシー侵害が乗っかるので、トータルでマイナス。警察庁は“犯罪抑制効果はなかった”と評価している」
国際NPOによる各種研究の評価(2008年)によると、防犯カメラは駐車場での犯罪減少に最も効果的だという。一方で、設置によって犯罪被害割合が増加する研究結果もあるということだ(出典:The Campbell Collaboration)。 また武藤氏は、きっかけとなった電車内の殺傷事件について、「ああいう事件は、“誰かを殺して自分も死のう”みたいに自暴自棄になった人、思い詰めたような人の犯行だ。検挙を恐れていない人には効果がない」との見方を示す。 さらに、痴漢対策としても疑問符がつくという。「痴漢が起こるのは満員電車だ。密集して動けないような状況、死角もある中で、“こいつの手が触っている”と的確に捉えられるカメラの設置場所は正直わからない。技術的に難しい」。