リオ五輪で目立つ空席。現地では本当に盛り上がっているのか?
一部の人気競技をのぞき、リオデジャネイロ五輪の会場には空席が目立つ。リオのホテルで、テレビの五輪中継を観ていても、大会テーマカラーのグリーンやイエローの席がそのまま見えている競技が多い。北京五輪など過去の五輪では、前売りではほとんどの競技のチケットが売り切れで、当日券が販売されることは稀だったが、リオでは人気競技以外、チケット売り場で当日に購入可能なのだ。 なぜか? 五輪ボランティアの女性は、「高いから買わないんだと思います」という。 「カヌーや女子サッカー、レスリングの予選などは安くて40レアル(約1200円)ですが、陸上100メートル決勝や男子バスケ、水泳などは1000レアル(約3万円)もします。ブラジルの平均月収は1000レアルもないので、普通の人は買えないですよ」 ブラジルの最低賃金は現在、月額880レアル(約2万7千円)。昨年の平均給与は1270.74レアル(約3万9千円)だった。貧富の差の規模が世界10位に入るほど大きく、人口の15%が富裕層であるブラジルという国のお国事情を考えると、平均的庶民の月収は、平均額よりずっと少ないと考えられる。 そう思って来場者の様子をみれば、身なりや持ち物に余裕がある雰囲気の家族連れが目立つ。グッズ販売も好調で、オリンピックパーク内の販売店はいつも長蛇の列をつくり入場だけで1時間待ちの状態だ。黄色いネコ科の動物だという五輪マスコット「ヴィニシウス」のぬいぐるみ(100レアル=約3000円)を持ち歩く子どもも多い。ブラジルの平均的収入を考えると、気軽に買うようなものでもなさそうに思うが、マスコット人気が高いのだろうか。 このマスコットの人気が高いからグッズが売れているのかと何人かにきいてみたが、「そうでもないと思う」「微妙ですよ」と口をそろえる。どうやらお祭り気分にのって、余裕がある家庭の親が子どもに買い与えている様子だ。 オリンピックパークはそれなりに賑やかだし、レストランなどで五輪中継されていれば、お客さんみんなでその場は盛り上がっているリオデジャネイロだが、五輪が実施されているとき独特の、街全体を包む祝祭の雰囲気は薄い。五輪のシンボルである聖火台がパーク内になく、シンボルとしての機能を果たしていないことも影響しているだろう。