永住資格、不安定化に懸念 「選ばれる国」逆行も 入管法改正
今国会で審議中の入管難民法改正案を巡り、永住者が税や社会保険料の納付を故意に怠った場合、永住許可の取り消しを可能とする規定に対し、懸念の声が出ている。 【ひと目でわかる】住基台帳に基づく日本人、外国人の人口推移 政府は慎重に対応すると理解を求めるが、野党などは「永住者の地位が不安定になる」と批判。運用次第で、岸田文雄首相が提唱する「外国人材に選ばれる国」と逆行する恐れもある。 首相は15日の衆院法務委員会で、取り消し対象は「一部の悪質な場合」に限られると強調。「大多数の永住者に影響を及ぼすものではない」と懸念の払拭に努めた。 これまでの審議で、小泉龍司法相も「やむを得ず支払えない場合は取り消し事由に該当しない」と説明している。 永住者は、滞在期間や就労活動に制限がない在留資格。2023年12月末時点で約89万人に上る。許可後に資格を取り消すことは原則できない。 出入国在留管理庁は審査の際、納税など公的義務の履行状況を確認するが、地方自治体から「永住許可後に履行しなくなる事例がある」との指摘が出ていた。同庁は実態把握のため、23年1~6月に行った永住者の子の永住許可審査1825件を調査。235件で未納が確認されたという。 ただ、永住者全体の履行状況や、故意の不払い割合などは分かっていない。小泉法相は「(未納の)ケースが一定数あることが示された」と主張するが、立憲民主、共産両党は改正の必要性を裏付ける「立法事実」がないと訴える。 与党は17日にも衆院法務委で採決したい考え。立民や日本維新の会と、改正案の付則に永住者への配慮規定を盛り込む修正案を検討している。