閉経前に更年期の症状が出たら、ホルモン補充療法(HRT)はやるべき?【我慢しないで快適に過ごす、閉経への道 ③】
【教えてくれたのは】 対馬ルリ子さん 産婦人科医・医学博士。1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
安全な薬も出ているのだから、ホルモン補充療法をやらない手はない!
「つらい症状が女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって起きているのであれば、ホルモン補充療法(HRT)で断然、改善が見込めます!」とは、幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う産婦人科専門医の八田真理子さん。 逆に、ホルモン補充療法を試しに1カ月やって、それで改善されないのならホルモン低下による症状ではない可能性もあるそう。 「どちらにしても『更年期の症状かも…』と婦人科を受診したら、内診をしたり血液検査でホルモン値を調べたりして、体が更年期レベルにあるかどうかを調べます。 乳がんの経験者や治療中の人、血栓症や動脈硬化がある人、重い肝臓病の人など、ホルモン補充ができない人もいますけど、できる人はやったほうがいいといえます。 子宮筋腫がある人でさえも、確認しながらホルモン補充療法ができる時代です。 ホルモン補充療法は、経皮タイプのエストロゲンと天然型プロゲステロンを使えば、血栓症や乳がんリスクを上げないことがわかってきました。より安全で使いやすいお薬が登場しているから、もう、やらない手はないのでは? と思います。 私自身もホルモン補充療法をやっていますが、一生続けていくつもりです。今後、年齢に従って少しずつ減量しながらですけれど。 ホルモン補充療法というのは、ホルモン量の揺らぎが大きくてアップダウンを繰り返している時期に少しホルモンを補って、揺らぎを少しなだらかな波にするのが目的。閉経前でももちろんやってOKです。 補う量はほんのちょっぴり。30代と同じホルモン値にもっていくわけではないの。低用量ピルよりホルモン量は少ない薬なんです」 《知識の差が、見た目の若さにも反映されてしまう時代です》 ホルモン補充療法(HRT)の存在はだいぶ知られてきたが、躊躇している人はまだ少なくないとか。 「『そこまでしなくてもいいかな』のそこまでって何? とか。『がんのリスクがあるんですよね?』って。安全なことは明らかなのに、とか。あと、『お金がかけられないし』とかね。なぜか高価なイメージがあるの。健康保険がきく処方薬なので、3割負担で、ひと月2000円から3000円ですよ。 あとは『通院がめんどくさい』も、よく言われます。『3カ月に1回の通院でいいんですよ?』と言っても『忙しいし~』なんて言われてしまいますね。 40代、50代は働き盛りだし、まだ子育ても残っているし、親の介護が始まったりで、大変な時期ではあります。でもね、不調があるまま年齢を重ねたら、今度はもっと医療費がかかる。本当に病気になっちゃうんです。病気とはいえない更年期の症状を抑えたほうがよっぽど得策です。 ほかにも『夫がうんって言わない』という理由。これは自分のことじゃない、自分で決めましょうよ、って伝えたいですね。私は患者さんに『なんでなんで?』『なんでやりたくないの?』としつこく聞いてしまうんです。だって、絶対やったほうがいいと思ってますから。 自分の中で、医療の進歩を受け入れられない、でも不調で困っている。それがよく言われる知識のなさ、リテラシーの低さ、ではないでしょうか。『私はこのままでいいわ、これは仕方ない』なんて言っていたら落ちていくばかり。残念ながら、前向きでない考え自体が自分を苦しめていると言わざるを得ません。それは知識不足、健康リテラシーが低いということですよね。逆にリテラシーの高い人も増えているから、格差はかなり広がってる。つまり、二極化するのが更年期なんです。 60歳を越えてもきれいな人、いっぱいいるでしょう? 知識がなくてみるみる老けていく人と若くいられる人の差が、どんどん開いていくってことになっちゃいますよね」
【教えてくれたのは】 八田真理子さん 産婦人科専門医。幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。 イラスト/Shutterstock 取材・原文/蓮見則子