【宮本慎也】大方の予想覆し逆転日本一DeNA「乗ったら怖い」強さの象徴はMVP桑原将志
<日本シリーズ:DeNA11-2ソフトバンク>◇第6戦◇3日◇横浜 大方の予想を覆し、2連敗スタートだったDeNAがソフトバンクに4連勝。圧倒的に優位だと思われていた強敵を相手に逆転で日本一を達成した。DeNAファンにとって、失礼な言い方になってしまったことを謝るが、セ・リーグ3位からシリーズ進出を決め、パ・リーグでぶっちぎりの独走Vを決めたソフトバンクに4勝2敗。「乗ったら怖い」というDeNAらしさを発揮した。 【写真】三浦監督、涙!!! DeNAの強さを象徴したのが、MVPに選ばれた桑原の活躍だろう。桑原という打者は超が付くほどの積極的に打つ打者で、調子づくと厄介なタイプ。ここまでもいいところで打っているし、好守備も連発し、乗りに乗っている。そんな桑原に対し、今試合の第1打席と第2打席はツーシームを続けて打たれ、第3打席もスライダーを続けて打たれている。ちなみに第4打席の四球もフォークを続けて見逃されている。この点はソフトバンクバッテリーの反省点に挙げられる。 そして1発のある牧、オースティン、筒香、宮崎といった長打力のある打者が、効果的な場面でホームランを打って連勝をアシストした。それぞれ絶好調という状態ではなかったように思えたが、やはり長打力がある打者は怖い。DeNAの強みが、シリーズでも発揮されていた。 ソフトバンクの敗因は、強力打線の状態がいまひとつだったことが1番に挙げられるだろう。それでも「打線は水物」と言われるように計算しづらい面がある。むしろ投手陣のやりくりがうまく回らなかった方が痛かったのではないか。 第3戦からの連敗を振り返ると、継投がうまくいかなかった。大ざっぱに見ても、第3戦から第6戦まで先発が右投手なら右が3投手、先発が左なら左投手が3投手続く継投だった。安定感のあったリリーフの松本、藤井を欠いた布陣で、やりくりが難しくなったのは仕方ないが、短期決戦は継投が大きなカギを握る。第3戦がスチュワート-大津-岩井で5回3失点。第4戦が石川-尾形-岩井で7回5失点。第5戦が大関-松本晴-前田純で4回4失点。この3試合は早めの継投が想定された試合であり、右の後は左、左の後は右という準備をしていれば、もう少しすんなりとした継投ができていたと思う。 典型的な試合だったのが優勝が決まった第6戦だった。先発が有原とはいえ、負けたら終わりの試合。今試合は左の継投を準備しなくても石川とスチュワートがスタンバイ。有原は3回の頭から代えていいし、連続四死球を出した時点で左を挟んでも良かった。勝ちパターンで8回に投げる左腕ヘルナンデスも、もっと早いイニングで投げさせてもよかった。この6試合で安定感のあるヘルナンデスが3試合、オスナが2試合しか投げていなかったのも、少しもったいなかった。 DeNAはシーズン終盤で3位に入り、CSでも主力選手にケガ人が出て苦しい戦いだった。それでも圧倒的に強いと思われたソフトバンクを相手に日本一を達成。敬意を表するとともに、勝負事の恐ろしさ、そして面白さを十分に味わわせてもらった。素晴らしいシリーズだったと思う。(日刊スポーツ評論家)