《ブラジル》トメアスーで干ばつ被害=農産物に多大な悪影響
地球温暖化等の影響でアマゾン地域の河川の水位が下がる状況が続く中、日本人及び日系人が数多く住むパラー州トメアスーでは干ばつにより、コショウ、アサイーやカカオなど主要農業生産物の被害が拡大している。同地在住の日本人農家からは「長年、この地に住んでいるが、こんなことはこれまで一度もなかった」との声も聞かれ、今後の状況が懸念されている。 CAMTA(トメアスー総合農業協同組合)の乙幡敬一アルベルト理事長の話によると、昨年も同時期に3カ月間降雨がなかったそうだが、今年は6月半ば頃から5カ月半も雨が降らない状況が続いた。その影響でCAMTAでは、全体的に2割の減産になっているという。 農作物の中でも特に被害が大きいのが、コショウとアサイーだ。コショウは潅水(かんすい)していない所は全滅し、アサイー椰子も川べりに自生するものは干ばつによる水量の低下でほとんどが枯れた状態だそうだ。同組合での取り扱いが多い主要農作物もアサイーとピメンタで、アサイーの昨年度の年間生産量は6千トンと多かったことから、今回の被害の影響は少なくない。 また、カカオは今年3月頃に国際価格が1トンあたり1万2千ドルと過去最高の高値をつけ、現在も1万ドルで推移している。CAMTA組合員170人のうち120人ほどがカカオ生産を行っているということから、被害状況も大きいと見られる。 CAMTAでは干ばつ対策として組合員に対し、生産物への潅水を促しているが、井戸水の水位低下や潅水による電気費用がかさむことも問題だ。「昨年と今年の干ばつの影響は当然、来年にも出てくるだろう」と乙幡理事長は、来年以降の農業生産にも影響することを懸念している。 一方、「64年間トメアスーに住んでいるが、こんなことは一度もなかった」と今年の干ばつ被害を憂慮するのは、同地でアグロフォレストリー(森林農業)の先駆者として自らの森林農業体験をモデルにパラー州をはじめ、ブラジル各地でアグロフォレストリーの講演及び実践指導活動を行っている小長野道則さん(66、鹿児島)だ。 CAMTA元理事長で同農協組合員でもある同氏によると、日中の室内温度がこれまで34~35度だったのが、今年は37~38度と2度ほど高く、干ばつによって湿度も40%ほどと空気中の水分量が低下。場所によって火災が発生した地域もあるという。 特にコショウは、南米よりも収穫時期が早いベトナムなど東南アジアでの減産の影響もあり、国際価格が高騰する中、今年のトメアスー地域でのコショウの減産でさらに高値になると見込まれている。 小長野さんによると同地では例年、11月2日のお盆が過ぎた頃から雨が降り出すそうだが、11月中も降雨がない状態が続いた。それでも12月初旬の3日、4日にまとまった雨が降り、幾分か農地の土壌も回復しだしたとし、これからの雨季の降雨に期待感を込める。反面、「昨年もセッカ(干ばつ)でしたが、今年はそれよりもっとひどい状況です。この分だと、農業生産者が本当に回復できるのは5、6年かかると思います」と小長野さんも昨年からの干ばつ被害が今後の農産物の収穫に大きく影響すると見ている。