自然の中を流れる川の水「飲める/飲めない」を見極める方法。“無色透明が安全”とは限らない
人間が水なしで生きることができるのは72時間、つまり3日間しかない。アクシデントなどで3日以上、自力で生き抜かなくてならない状況では、3日以内に飲料水を確保しなければならない。そのために必要な、できるだけ安全な水を手に入れる知識を『災害からテロ、ミサイル攻撃まで まさか⁉の非常事態で「死なない技術」』 (扶桑社ムック)の著者で自衛隊危機管理教官の川口 拓氏に解説してもらった。 ⇒【写真】一見きれいな川の水でも、上流に汚染源がある場合が
都市では水の入手は難しい。だから備蓄が大切
サバイバル状態での最優先は体温の保持の確保。その次は飲料水を入手することを考えなくてはならない。タイムリミットは72時間=3日間である。 ここで、自然の中でのサバイバルと都市部でのサバイバルについて、水の面から考えてみよう。日本の自然豊かな場所では、煮沸だけで飲用可能になる河川の水も珍しくない。自然の川では水質が澄んでいることも多く、水辺に近づきやすい場所も豊富だ。 それに対し都市部に流れている河川だと、煮沸だけでは取り除けない化学物質などが混入している可能性があり、安心して飲めるとはとてもいい難いというのが現実だ。また、川面までのアプローチがなく近づきにくく、水質も濁っていることも多い。
都市部のサバイバルの厳しさ
このことからもわかるが、実は都市環境でのサバイバルは、とても厳しい。自然の中ならさほど苦労せずに手に入るのに、都市だと難しいというものが水のほかにもあるのだ。 もちろん、水や食料などの備蓄があれば、都市部で被災してもほぼ問題なく過ごすことができる。だが私は、被災生活を送るのであれば、命を助けてくれるさまざまなものが手に入り、焚き火ができる森で過ごすほうを選びたい。
上流や近隣の状況に注意して、水の安全性を見極める
目の前にある水が安全かどうかを、見た目やにおいなどの人間の感覚だけで見極めることはできない。透明で無臭だからといって、その水が安全とは限らない。反対に茶色に濁っていても体に害がないということもあるのだ。 だから、どんな水でもまずは疑ってかかることが大切だ。そして、浄水器でろ過したり、煮沸処理をしたりして、何も処理をせずに飲むことは、できる限り避けなければならない。 たとえば北海道の山では、無色透明でも生水を飲んではいけないとされている。これはキツネに寄生するエキノコックスという寄生虫の卵が糞尿を通じて川に混入していることがあるからで、その水を飲んで感染すれば肝機能障害などを発症する危険があるためだ。