海星の守備の要「見に来てくれる気が…」 亡き祖母に活躍誓う センバツ
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)の第3日、社(やしろ)(兵庫)と対戦する海星(長崎)の峯蒼一郎遊撃手(3年)は、2022年秋の九州地区大会で4強入りした後の12月、祖母節子さん(享年80)を亡くした。闘病生活を送りながら、命が尽きるまで応援してくれた優しい祖母。センバツ初戦に向け「おばあちゃんが見に来てくれる気がする。活躍している姿を見せたい」と意気込む。 長崎県西海市出身の峯選手は小学2年でソフトボールを始めた。両親が共働きだったため、放課後は自宅から約1キロの節子さん宅で過ごした。節子さんは明るくて料理上手。峯選手は節子さんが焼いてくれるチョコレートクッキーが大好きだった。 だが、峯選手が中学1年の時、節子さんは体の痛みを訴えた。体が動きにくくなっていく多系統萎縮症という病気だった。即入院し、約1年後には話すのもつらそうに。そして峯選手が海星に進学した頃、寝たきりになった。母一美さん(49)から「おばあちゃん、もう少しだから」と告げられショックを受けながら、高校野球のテレビ観戦が好きだった節子さんの言葉を思い出した。「甲子園で野球をしている姿を見せてね」 節子さんの回復を願いながら、懸命に持ち味の守備を磨いた。そして2年生だった22年夏、甲子園に出場。節子さんは寝たきりで話せない状態だったが、試合中は看護師がテレビ中継を見ながら「峯君が打ったよ」「捕ったよ」と節子さんの耳元で伝えてくれた。 2回戦の天理(奈良)戦。2点差に詰め寄られた八回裏2死満塁のピンチで、二塁を守っていた峯選手が後方のフライを好捕した。チームを救うファインプレーを看護師が伝えると、節子さんの目から涙が流れた。後日、伝え聞いた峯選手は胸を打たれた。「話せなくても声は聞こえているんだ。自分のプレーを喜んでくれているんだ」 22年秋の長崎県大会、九州地区大会で峯選手は節子さんを思いながらプレー。九州地区大会で4強入りして約2カ月後の12月、節子さんは息を引き取った。 今大会、遊撃を守る峯選手は「守り勝つ野球」を掲げる海星の守備の要として自身2回目の甲子園に臨む。アルプススタンドで両親が手にする遺影を前に、全力プレーを見せる。【松本美緒】