『グランメゾン・パリ』の天才シェフ、尾花夏樹をはじめ木村拓哉が演じた不可能を可能にするキャラクターを振り返り！

2019年秋に放送され、大好評を博した木村拓哉主演ドラマ「グランメゾン東京」。木村演じる妥協を知らないフランス料理のシェフ、尾花夏樹が東京の目黒にフレンチレストラン「グランメゾン東京」をオープンさせ、すべての料理人にとっての最高峰、ミシュランの三つ星を目指すストーリーが描かれた。そしてドラマの最終回で見事、三つ星を獲得した尾花と仲間たち。それから5年後、尾花の新たな挑戦を描く映画『グランメゾン・パリ』が公開中だ。 【写真を見る】木村拓哉が時空構造研究の第一人者、沫嶋黎士とアンドロイドの安堂ロイドの2役を熱演した「安堂ロイド～A.I. knows LOVE？～」 ■「グランメゾン東京」から『グランメゾン・パリ』へと引き継がれた尾花夏樹の挑戦 かつて夢破れたフランスのパリに戻ってきた尾花は、彼と共にグランメゾン東京を作り上げ、オーナーシェフを務めた早見倫子(鈴木京香)や旧知の仲である京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)らと新店舗「グランメゾン・パリ」をオープンさせていた。再び三つ星を獲得すべく日々奮闘する尾花たちだが、名匠たちがひしめくフレンチの本場において三つ星の壁は厚く、食材調達から苦戦することに。そして追い詰められた尾花は、とある失敗をきっかけに恩師と無謀な賭けをしてしまう。 ドラマに続いて監督を務めたのは『ラストマイル』(24)の塚原あゆ子。木村が型破りな天才シェフの尾花に扮し、パリで悲願のミシュラン三つ星を手にすべく切磋琢磨する姿が描かれる。“パリでアジア人初の三つ星シェフ”という現実離れしたキャラクターも、木村が演じると説得力が増してたちまち血肉の通った魅力的なキャラクターへと大変身！これまでも木村は、そんな不可能を可能にする頼もしいキャラクターを数多く演じてきた。そこで本稿では、木村による“ミッションポッシブル”な作品を振り返ってみたい。 ■全国を掌握しようとする天下人、織田信長を憑依させた『レジェンド＆バタフライ』(23) 映画「るろうに剣心」シリーズの大友啓史が監督を、古沢良太が脚本を務め、完全オリジナルストーリーで描いた歴史大作。“魔王”と呼ばれた織田信長と正室の濃姫(綾瀬はるか)が夫婦としての強い絆を育んでいく姿を追う。1998年のドラマ「織田信長 天下を取ったバカ」に続いて2度目の信長役に扮した木村は、綾瀬との息の合ったかけ合いを披露し、戦乱の世に武力でもって全国を掌握しようとする天下人を完全に憑依させていた。 ■連続殺人事件を捜査するため、一流ホテルに潜入する刑事を演じた『マスカレード・ホテル』(19) 東野圭吾の大人気小説を長澤まさみとの共演で映画化した傑作ミステリー。2021年には続編『マスカレード・ナイト』も公開された。一流ホテル「ホテル・コルテシア東京」を舞台に連続殺人事件の謎がひも解かれる。木村が演じたのは、コルテシア東京に潜入捜査する警視庁捜査一課の敏腕刑事、新田浩介。慣れないフロントクラーク業務に苦戦しながらも、一流ホテルマンの山岸尚美(長澤)とバティを組んで鋭い洞察力を発揮した。 ■法の枠を超えて正義を貫こうとするエリート検事を体現した『検察側の罪人』(18) 『BAD LANDS　バッド・ランズ』(23)の原田眞人監督が手掛け、二宮和也との共演で描いた、社会的正義の意味を問うサスペンスドラマ。ある殺人事件をきっかけにエリート検事と若手検事が、法と正義をめぐって激しく対立する。冷徹ながらも信念を貫くベテラン検事の最上毅に扮した木村。法の枠を超えて正義を貫こうとする彼の危うさとカリスマ性を完璧に体現した。 ■不死身の守護者として華麗なる剣戟アクションを披露した『無限の住人』(17) 木村が三池崇史監督とタッグを組んだ“ぶった斬り”エンタテインメント。不死の肉体を持つ剣士が、復讐を誓う少女の用心棒になることで生きる意味を見いだしていく。死ねない呪いを受けた侍、万次に扮した木村が、不死身の守護者として華麗なる剣戟アクションを披露した！ ■型破りな検事、久利生公平として数々の事件の真実を暴きだした「HERO」 東京地検城西支部の型破りな検事、久利生公平が、既成概念に囚われないアプローチで真実を追求していくリーガルドラマ。2001年に放送された第1シリーズでは平均視聴率34.4%を叩きだす大ヒットとなった。木村は中卒の元不良で、大検を受けて司法試験に合格して検事になった久利生役にトライ。人一倍正義感が強くて行動力がある異色の検事が、数々の事件の真実を暴きだした！ ■研究者とアンドロイドの2役に挑戦した「安堂ロイド～A.I. knows LOVE？～」 世界で名の知られる天才物理学者が、命をねらわれた婚約者を自らの命を賭して守り抜く時空を超えた究極のラブストーリー。時空構造の研究における第一人者である沫嶋黎士が愛する安堂麻陽を柴咲コウが演じ、木村は冴えない風貌の沫嶋と100年先の未来から現代へと送り込まれたアンドロイドである安堂ロイドの2役を熱演している。 ■宇宙戦艦ヤマトの古代進としてリーダーシップを発揮した『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10) 『ゴジラ-1.0』(23)の山崎貴監督が、一大ブームを巻き起こした国民的アニメを実写化したSFアクション。西暦2194年、外宇宙に現れた正体不明の敵ガミラスが地球を侵攻。地球滅亡の危機を救うため、人類最後の希望となる宇宙戦艦ヤマトが遠く離れたイスカンダルへと旅立つ。木村は元エースパイロットの古代進役で出演。仲間たちとの絆を深めながら、絶望的な状況においても強い心とリーダーシップを忘れない姿が印象的だった。 天下を取ろうとする織田信長にコンシェルジュとして潜入する刑事、不死身の侍などなど、ひと括りにはできない多彩なキャラクターに説得力をもたらしてきた木村拓哉。最新作『グランメゾン・パリ』で彼は、フランスでアジア人初のミシュラン三つ星の称号を勝ち取るべく、前人未踏の領域を突き進むフレンチシェフをどのように体現するのか。そのチャレンジの結末は、劇場で確かめてほしい。 文/足立美由紀