ベストセラー戦車の最新型「もういいです」イタリア向け3国共同開発が頓挫か “乗り換え先”の戦車とは
陸自90式と似ている? いまのイタリア戦車
イタリア陸軍は2024年6月現在、国産のC1「アリエテ」戦車200両を保有しています。 アリエテの開発は1980年代に行われ、1990年からイタリア陸軍に配備されています。同じ1990年には陸上自衛隊に90式戦車が配備されていますが、開発と配備時期だけでなく、コンセプトも似ていることから、アリエテと90式戦車は「同期生」と言えるでしょう。 その開発は、イタリアなど5か国の商用車メーカーが合併して誕生したイヴェコと、海上自衛隊の護衛艦にも採用された速射砲などを開発したオート・メラーラ(現レオナルド)が主導して行われました。 オート・メラーラが開発したアリエテの主砲は90式戦車などと同じ44口径120mm滑腔砲です。44口径120mm滑腔砲は薬室の規格が統一されているため、レオパルト2などと同じNATO標準の120mm砲弾を使用できます。 射撃統制装置は車長のパノラミック昼間サイト、砲手のペリスコープ・レーザー・サイト、弾道コンピューター、センサー、砲口参照システムなどから構成されており、命中精度はレオパルト2A4に匹敵するレベルと見られています。 砲塔前面は敵の砲弾を弾きやすくするため、大きく傾斜しています・また砲塔前面と車体前面には、素材は不明ですが複合装甲が用いられており、現在スイスなどで運用されているレオパルト2A4と同等の防御力を備えていると目されています。 アリエテも90式戦車と同様、経年劣化による老朽化・陳腐化が問題となっていました。このためイタリアはエンジンをパワーアップし、射撃統制装置などを近代化した改良型のC2「アリエテMk.2」を開発し、2015年から2020年にかけて配備する意向を示していました。しかし財政難などから開発はキャンセルされ、改良も航法・指揮通信装備などの追加装備などにとどまっています。
代替は全く別のドイツ製戦闘車か
半島国家であるイタリアの国土を護るイタリア陸軍は、冷戦時代から大陸と国境を接する北部には戦車を中心とした装軌式車両を運用する部隊、海に面した南部には機動力の高い装輪式車両を中心とした部隊を配置しており、南部の部隊には1991年から105mmライフル砲を備えた装輪式の「チェンタウロ」の配備を開始しています。 またイタリア陸軍は2021年から、120mm滑腔砲や砲弾自動装填装置、モジュラー装甲などを備えたチェンタウロの改良型「チェンタウロ2」の配備計画も進めています。 戦闘力のアップしたチェンタウロ2の配備により、イタリア南部の防衛力はより強固なものとなるはずですが、高まるロシアの脅威に対処するには就役開始から30年以上が経過し、老朽化・陳腐化が進むC1アリエテでは力不足であることが明白でした。 その後継としてイタリア陸軍はレオパルト2A8IT の導入を決定したわけですが、前にも述べたように同車によるアリエテの更新計画はほぼ頓挫したことになります、 中央日報は業界情報筋の話として、イタリア陸軍がレオパルト2A8の代わりにKNDSのライバルであるドイツのラインメタルが開発したKF51「パンター」の導入を考慮する可能性があると報じており、今後の推移が注目されます。
竹内 修(軍事ジャーナリスト)