FRBの利下げ開始は「誤り」か、懸念広がる新興市場は中ぶらりん
(ブルームバーグ): 世界で最もリスクに敏感な新興国資産の一部の値動きは、米連邦準備制度の利下げ開始決定が時期尚早だったか、持続不可能な可能性があるとの懸念を示している。
9月18日に米金融当局が市場予想中央値の2倍の0.5ポイント利下げに踏み切って以来、新興市場国の資産は、米国の借り入れコストが高止まりするとの見方を反映したような動きを見せている。新興国の資産は中ぶらりんの状態に置かれており、再び低迷局面に向かっている。
米利下げはわずか1カ月余りで新たなリスクに覆い隠されており、世界の投資家は新興国資産に二の足を踏んでいる。米金融緩和サイクルで通常期待されるプラスの影響に陰を投げ掛けているのは、トランプ前米大統領返り咲きの可能性と、中国の景気刺激策が力不足に終わるリスクの二つで、米国債利回りの上昇やドル高、通貨オプションのボラティリティー増大などさまざまな形で表れている。
こうした状況は、新興国市場のトレーダーらが再び、インフレ気味の米経済とデフレ傾向の中国経済に対して守りのポジションを取っていることを意味する。
GAM・UKの投資ディレクター、ポール・マクナマラ氏は「新興国市場には依然、存続に関わる二つの潜在的脅威がある。それは中国の景気低迷とトランプ氏の返り咲きだ」と指摘。「インフレのない力強い米経済は新興市場にとって良いことだが、持続的なインフレは利下げを先延ばしにするだけでなく、中期的にはあらゆるリスク資産に重しとなる」と述べた。
米利下げで新興国市場は当初こそ上昇したものの、米国の好調な経済指標でインフレが再燃するとの懸念に妨げられ、その後、共和党大統領候補のトランプ氏の発言でインフレ警戒感がさらに高まった。トランプ氏は関税と保護主義を政策の中心に据えており、これが実施されれば米国の消費者物価が上昇し、新興国製品の需要が減退する可能性が高いと多くのエコノミストは予想している。