「怪物」の異名を持つ衝撃の姿 アルファ・ロメオRZ(2) エンターテインメント性は歴代1番
親しみやすい本物のスポーツカー
RZの真価は、コーナーで現れる。SZの最大の武器は、シャープな操縦性とグリップ力だった。それは、RZでも受け継がれている。 コニ社製のダンパーは、手元で車高を調整可能。1番低くすると乗り心地は硬めになるとはいえ、路面の凹凸で手荒い衝撃に襲われることはない。落ち着いていて、フワフワと揺れることもない。 マン島自動車博物館からお借りした貴重な車両だが、活発なRZへ深く惹き込まれる。加減速時のピッチングはほぼ皆無。ワダチによるワンダリングもない。シャシーは至ってニュートラル。ステアリングホイールは、コミュニケーション力に長けている。 過去の経験から、オーバーステアへ持ち込むには、相当まくし立てる必要があるはず。しかし、そんなスタイルはRZに似合わない。 初めはスローに感じられたステアリングだが、ペースが速まれば充分クイック。パワーアシストが控えめだったに過ぎないようだ。ヘアピンカーブでは、僅かにアンダーステア傾向にあるが。 ピレリ・タイヤを鳴かすことなく、フルパワーを展開できる。不思議なほど、圧倒感が薄い。いつまでも運転し続けたいと思える。 公道で許容しきれないほど、パワーがあるわけでもない。硬すぎるサスペンションが、乗り心地や楽しさを削ぐこともない。本物のスポーツカーとして、RZは親しみやすい。
歴代1番のエンターテインメント性
人影のない公道で、眩しい陽光と乾いた風を浴びながら、V6エンジンのサウンドに浸る。クルマの素晴らしさを、再認識できる。身のこなしに、クーペのSZへ並ぶ鋭さや正確さはないかもしれないが、現実世界での差は殆どないといっていい。 エンターテインメント性で評価すれば、RZ以上のアルファ・ロメオは登場していないように思う。8Cや4C、ジュリア・クアドリフォリオも、これを超えてはいないだろう。 ソフトトップを閉めると、視界は著しく悪くなる。塗料がのりにくいメタクリル樹脂だから、ボディには気泡が生じがち。リアの荷室は、グローブボックス程度の大きさしかない。それでも、運転は望外に楽しい。 怪物の異名を持つRZだが、決してそんなことはない。ずっと一緒に時間を過ごしたい、アルファ・ロメオだ。 協力:マン島自動車博物館 撮影:リチャード・ドレッジ(Richard Dredge)
リチャード・ヘーゼルタイン(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)