ポンド続落、約1年ぶり安値-英国債は下げ縮小も財政懸念続く
(ブルームバーグ): 9日の外国為替市場でポンドが下落。対ドルで一時1%安となった。借り入れコストの上昇で、労働党政権が財政赤字抑制に苦戦するとの懸念が背景にある。
ポンドは3日続落し一時1%安の1.2239ドルと、2023年11月以来の安値を付けた。英国債も売られ、10年物利回りは一時13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.92%と、2008年7月以来の高水準に達した。30年債利回りは1998年以来の水準を付けた。
ジョーンズ財務副大臣は9日、英下院で野党・保守党からの緊急質問に答え、「英国債市場は秩序立って機能し続けている。金融市場で大きな動きがある際、国債の価格や利回りに変動が生じるのは当たり前のことだ」と述べた。
この動きは、2022年にトラス元首相の下で見られた英市場のメルトダウンと比較されている。当時のような規模の危機を防ぐために市場構造は強化されているが、政府の債務負担増大は再び投資家の懸念材料となった。
M&Gインベストメンツのファンドマネジャー、エバ・サンワイ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で「英国の財政見通しは憂慮すべきものとなっている。財政に慎重さが欠けている」と述べた。
クレディ・アグリコルのG10FX戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏(ロンドン在勤)は、「英資産ポートフォリオの先行きを心配する投資家のはけ口に、ポンドが選ばれている可能性がある。市場は現在、かなり神経質になっている。為替トレーダーはボラティリティーの高まりを利用し続けるだろう」と話した。
ポンド安は一部の市場参加者の不意を突いた。金利上昇は通常、通貨の魅力を高めるが、英国債利回りが十数年ぶりの高水準であるにもかかわらずポンドが売られていることは、投資家がインフレ圧力の継続や政府財政の持続可能性を懸念して、資本逃避が起きている可能性を示している。
9日午後に市場の混乱は和らぎ、英国株は上げに転じ、英国債とポンドは下げを縮小した。それでもオプション市場を見る限り、ポンドの混乱は続く恐れがある。向こう1週間のドル、ユーロに対するポンド下落をヘッジするコストは昨年11月の米選挙以来の高水準となっている。